毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

どうして男は地位を追い、女は美を追うのか?それは永遠の生への執着~中村うさぎ×佐藤優 『聖書を読む』

聖書を読む 中村うさぎ氏×佐藤優氏の「天地創造から世界の終わりまで―共にキリスト教徒の二人が読み、語り尽くす、聖書をめぐるバトル対談。」2013年

  

聖書の対談の幕間について中村氏が自己の体験から整形を説明する。

どうして整形にはまったか?

 

 

最初はタカナシクリニックの高梨院長と雑誌の対談で会ったんだけど、ちょっと面白そうなのでやってもいいかな、と思ったのがきっかけ。最初はプチ整形だけという話だった・・・(その後)職人気質の高梨が、絶対にこのたるみが許せない、取らせてくれと言ってフェイスリフトをやりましょうということになったんだよね。これをやってみたら、本当に驚いた。あまりにも劇的に顔の輪郭が変わるので。整形ってすごいなと思い、まあそこあkらですね、はまっていったのは。(122ページ)

顔の美醜とは

 

私が整形をして何が一番大きな発見だったのか。それは、美醜みたいなものと、自分の価値を切り離すことができたということですね。・・・まずひとつにはブスだって言われても傷つかない訳ですよ。だって、それは(整形した)高梨の責任だから。・・・美人ですね」と言われても、高梨の手柄であって、私の価値が上がった訳じゃないので、そこからも離れられる。・・・美醜の問題と自己責任や自我の問題、私という内面の人格との関係が、ちょっとここに「高梨」というフィルターを入れられたことで、ものすごくタンクになったの。(124ページ)

愛が置き換えられた美醜、能力が置き換えられた地位

 

中村うさぎ氏は「女性は愛という名の個人の承認を求め、それはしばしば美醜に置き換えられる」と説明する。一方佐藤優氏は「男の世界では能力を地位に還元しちゃうのとすごく似ている」と言う。

宗教と資本主義

 

宗教の本質が永遠の生への執着であり、現代は既存宗教の役割が縮小し、資本主義がその部分を埋めているといる論理が展開される。佐藤氏は貨幣への追求を「不死の思想とものすごく近い」(339ページ)と説明する。

マックス・ウェイバーはキリスト教、特にプロテスタントのカルバン派が資本主義を加速させる背景であったと説明した。本書のエピソードで語られる男は地位を追求し、女は美醜に拘る、そこに「永遠の生への執着」を見出す。永遠の生があり得ないと知りながら、宗教の「あの世」の論理、今は代わって資本主義の「この世」の論理、私はここに人を不安に駆り立てる論理の根本を見いだす

 

我々は資本主義の及ばない所のある世界にいる~よりよく生きる為の「資本論」 - 毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

 

蛇足

 

諸行無常という言葉を思い出す。