毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

我々は資本主義の及ばない所のある世界にいる~よりよく生きる為の「資本論」

いま生きる「資本論」

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資本主義という価値観からの脱出

この講座(本)で「資本論」を読んでいくことでわれわれが具体的に何を学ぼうとしているかというと、「今の価値値からの脱出です。」お金を稼いで株式時価総額を世界一にする。隣のやつよりも自分の賃金が5000円でも1万円でも高い方がいい。そういう社会の価値観から抜け出すことができる理論的基礎を作る事です。

資本論から分かる事

賃金は生産過程で決まっているということがわかれば、いくら一生懸命働いても、億万長者になることはできないとわかる。我々は労働者の側にいる以上、そこには限界がある。(166ページ)

われわれは大金持ちにはなれませんが、食っていけないほど貧乏にもならない、それが資本主義なのです。(242ページ)

資本論の誤り~窮乏化法則

資本論の「『資本の蓄積に照応する貧困の蓄積』をもたらす。」を引用して、)世の中は豊める者と貧しい者とに二極化し、真っ暗で、いいことは何もなくなる、という訳です。けれど、人間には反発心があるから、もうこれ以上堪えられないとなったら、暴発するんだ、と。・・・しかし資本主義システムの中できちんと回っていると、抵抗なんてしません。・・・実際には高度成長の中で日本人の生活水準はきちんと上がってきたのだけれれども、(資本論に基盤をおく左翼陣営は)そこを認める事ができずにきた。(146ページより再構成)

資本論の対極、近代経済学も同様の議論

新自由主義者が言うトリクルダウン効果(高所得者から低所得者へ富が移転する)なんてほとんどない。現にリーマンショック後も富の再分配が行われた結果、上位0.3%ぐらいの層に集中して、中産階級が無くなっている。・・・」というものです。近代経済学の中でリベラルと見られる人は、以外とスターリン主義的な、正当派のマルクス経済学が言っているような理屈をけっこう使っているんですよね。

佐藤氏の主張をまとめる。

・資本主義は競争により資本の拡大を行う終わりのない運動である事を気づきなさい。それに気づくにはマルクス資本論フレームワークは有効である。

・但しマルクス経済学が主張する様に資本主義が追求の果てに行き詰まって破綻するという事はない。近代経済学も資本主義の欠点を制御する理論は打ち立てていない。資本主義は社会に組み込まれたシステムだからこれからも存続していく。

・その時資本主義の欠点資本主義にも及ばない所があるのだと知りなさい。資本主義が及ばない所、それは家庭であり、直接的人間関係であり、環境問題であり、趣味の領域、などがある。

 

佐藤氏の主張を一言で言えば

「資本主義が組み込まれた世界でより良く生きるには、     資本主義が及ばない所に気づき、    そこでの自分を大切にする価値観に気づく事である。」

佐藤氏は資本論を「人生の指南書」として解説してくれた。

蛇足

「資本主義は世界の一部に過ぎない」と認識する事。