17世紀のバロック音楽からわかる事~絶対王政は富の浪費が権威の象徴、
15~18世紀のヨーロッパでは、封建的領主層の没落、超国家的権威としての教皇権の衰退、イタリア戦争などにみられる諸国家間の派遣争いを通じて各国の国内の一元的支配が強められ、内外に対する絶対的権利としての主権国家が形成された。(山川、世界史研究より)
本書は、「クラシック音楽」の歴史と、その前史である中世、ルネサンス、バロックで何が用意されたのか、そして、「クラシック後」には何がどう変質したのかを大胆に位置づける試みである。
絶対的王権を権威づけたもの、それは刹那的な富の浪費
この時代の王侯貴族は、自分の富と権威を誇示すべく、競って巨大な宮殿を建てた。モデルとなったのはルイ14世のヴェルサイユ宮殿だ。そこでは毎日のように祝祭が行われ、花火大会や馬上試合や舞踏会や晩餐会やバレエやオペラといったスペクタクルが、惜しげもなく提供された。刹那的な富の浪費こそが、絶対的な王権の証だった。
バロック音楽~王の祝祭の為の音楽
たった一人の王の栄光を称えるために、国中の富をつぎ込んで催される祝祭とは、いったいどんなものだったのか?ただ自分の為だけのために、国の財政が破綻する様な祝典を催させ、それを眉一つ動かさずに平然と受けいれられる人間の感覚はいったいどうなっているのか?王権を飾りたてる祝典としての音楽の有りようは、現代人の理解の範疇をはるかに越えている。(66ページ)
王の祝典は1日がかりの巨大イベント
王の晩餐会に招かれ、選り抜きの食卓音楽が響く中、数時間にもおよぶ食事をとり、それからやおやに宮廷内の目も眩むような装飾を施されたオペラ劇場へ場を移し、人気カストラートの声を夜更けまで端王し、その後で庭に出て、噴水をバックに花火を楽しむ、、。こんな体験を、我々はもはやすることはできないのである。
映画カストラートより
「聴衆のすべてが国王主宰の晩餐会でワインと食事を楽しんだ後、」想像できない、
バロック音楽(1600~1750)はスポンサーの目的に最適化
ルネサンス的な調和した美とは対照的に、バロックにおいては英雄的でギラギラした効果が好まれる傾向があった。周知のようにバロックとはもともと「いびつな真珠」という意味であり、ルネサンスと比べたこの時のこの時代の美術の趣味の悪さを揶揄した表現だった。この時代は、芝居がかったもの、壮大なもの、ヒロイックなものを愛してやまなかった。
バロック音楽音楽の代表例~王侯の舟遊びのBGM
ヘンデル 「水上の音楽」 アラ・ホーンパイプ バロック管弦楽団演奏 - YouTube
バロック音楽の時代は絶対王政を背景に富の蓄積が行われた時代、そして科学革命が進行し、産業革命の前夜。刹那的な富の浪費も、科学革命も、キリスト教に変わる権威、を探す努力であった事がわかる。
蛇足
我々は王様の晩餐会を想像できない。