毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

今から二千年前、真実はすでに記されていた。

 一四一七年、その一冊がすべてを変えた

グリーンブラッド氏はシェイクスピアの研究家。

本書の帯「今から二千年前、真実はすでに記されていた。」、2000年前ルクレティウスによって書かれた詩「物の本質について」が1417年再発見された話。

 

エピクロスBC341~BC270

エピクロスは「原子と真空以外なにも無い」という原子論に立脚し、包括的宇宙論と人生哲学を構築した。

「自然界の基本的構成要素と普遍的法則の理解が人生の最も深い喜びの一つなのだ。」「相手が死となると、我々人間は皆、城壁のない都市に住んでいる。」

「迷信から開放されれば、自由に喜びを追求できるであろう。」

エピクロスの哲学を詩にしたのがルクレティウス

ルクレティウス(BC99ーBC55)

共和制期の詩人・哲学者。エピクロスの宇宙論を詩の形式で解説。説明の付かない自然現象を見て恐怖を感じ、そこに神々の干渉を見ることから人間の不幸が始まったと論じ、死によってすべては消滅するとの立場から、死後の罰への恐怖から人間を解き放とうとした。(Wiki)

物の本質について(ルクレティウスの詩)

筆者は以下の様に書く。

「物の本質について」のどのページをめくっても強く感じられるのが、世界についての科学的な見方ー無限の宇宙空間で原子が不規則に動き回っているという見方ーに一人の詩人が抱いた驚異の念が溢れているいることである。驚異は神々や悪魔や来世の夢に従属するものではなかった。ルクレティウスの驚異の念は、われわれ人間が星々や海やその他の万物と同じ物質でできているという認識から沸き起こったものだった。そしてこの認識こそが、われわれが生きるべき理想の人生の基盤となる、とルクレティウスは考えた。(16ページ)

欧米人にとってのルネッサンスの意味

ギリシャ、ローマとつづいた西洋文明、自然科学の分野ではキリスト教が支配した中世においては停滞を余儀なくされた。筆者は1417年に「物質の本質」が再発見された事がルネッサンスの契機になっったと説明する。本書の口絵にルクレティウスの詩の描写したボッティチェッリを掲載する。これは生命の持つ明るさであると同時に、キリスト教の軛から離れた明るさの表明でもあると理解した。

 

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プリマヴェーラ1482年フィレンツェ・ウフィツィ美術館蔵

蛇足

どうして私が宇宙や物理に興味を持つか、答の一部がここにある。