毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

人間原理 宇宙論において

人間原理

「強い人間原理」とは知的生命体が存在し得ないような宇宙は観測され得ない。よって、宇宙は知的生命体が存在するような構造をしていなければならない。「弱い人間原理」とは宇宙の構造を考える時、人間の存在という偏った条件を考慮しなければならない。(Wiki)

 

青木氏は理論物理学の専門家であり翻訳家。宇宙はなぜこのような宇宙なのか――人間原理と宇宙論 (講談社現代新書)人間原理を説明している。

人間原理を裏付ける観測データ=λ

人間原理が嫌われた最大の原因は目的論」であり、あらゆるものは人間に奉仕する為の存在であり、神が目的の為にデザインしたというストア派哲学に通ずるものがあると前置きする。その上で米国のノーベル賞物理学者ワインバーグ氏の理論を展開する。

 1986年、悩み抜いたワインバーグは発想を変えてみた。真空のエネルギーの値は、ひょっとすると物理的な理由ではなく、何か別の理由で決まっているのではないだろうか?たとえば、自分という人間が存在していることと矛盾しないためには、宇宙の真空エネルギーはどんな値でなければならないだろうか?つまりワインバーグは、藁にもすがる思いで、人間原理の考え方を使ってみたのである。(中略)「もしも人間原理の考え方が有効なら、宇宙の真空エネルギー(宇宙定数λ)の正確な観測値は10の‐120乗より、それほど大きくも小さくもない値になるだろう。」(220ページ)

超新星の観測結果は宇宙は膨張している=λはゼロではない、120桁の0の後に有限な値が現れた事により人間原理という発想が目的論から乖離する形で認識できた事になる。

人間原理の先、観測測定効果

宇宙がたくさんあるのなら、人間原理の意味は反転するーそれは人間中心主義の目的論から人間による観測選択効果になるのである。(187ページ)

観測選択効果とは何らかの減少の観察が行われる際に、観察者の性質や能力によって、観測される対象の層に偏りが生まれてしまう現象のことを言う。私は観測測定効果を言い換えると「抽象的なモデリングする能力でありそうしたいという意思」だと思う。これこそが宇宙論を拡大してきた原動力と感じる。