毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

我々は何の為に戦っているのか?~『戦闘妖精・雪風(改)』神林長平氏(2002)

戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)

原作は1984年のSF小説、【 ネタばれ注意】

 南極大陸に突如出現した超空間通路によって、地球への侵攻を開始した未知の異星体「ジャム」。反撃を開始した人類は、「通路」の彼方に存在する惑星フェアリイに実戦組織FAFを派遣した。戦術戦闘電子偵察機雪風とともに、孤独な戦いを続ける特殊戦の深井零(文庫改訂版は2002)

 

異星体ジャム対地球型コンピュータ

ジャムは異星体だ。地球の支配者は人間でなく機械だと考えたとしても不思議ではない。・・・人間はジャムがいきなり一方的に攻めてきたと思っているが、しかし、地球機械はジャムの宣戦を受けているのかもしれないのだ。(110ページ)

 

戦闘妖精 雪風<改>

雪風とは異星体ジャムと戦うための戦闘機械知性体、それを搭載した戦術戦闘偵察機の名前である。要はジェット戦闘機であり、太平洋戦争当時の日本海駆逐艦雪風」に由来する。(「雪風」は16回出撃に成功した奇跡の駆逐艦として知られている。)

本書で主人公の零は戦闘妖精 雪風を駆って、異星体ジャムと空中戦を繰り広げる。ジャムは決して人間には姿を見せない。異星体ジャム対人間の戦いなのか?それとも異星体ジャム対地球型コンピュータの戦いなのか?もしかしたら我々は地球型コンピュータによって代わりに戦わされているだけなのかもしれない。零は何の為に戦っているのか?

我々の社会ではしばしば戦争が様々な比喩に使われる。経済戦争、外交戦争、資源戦争・・・。そこで共通するのは本当に我々は戦わなくてはいけない当事者なのか?戦争という比喩を使うことが本来の意図を隠しているのかもしれない。

30年以上前に執筆された本書は、AIが進んだ今こそリアリティを持つ。

蛇足

SFという想像力は現実を予測する

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