毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

誰でも株式会社設立ができるようになったのはいつだったか?~『株式会社とは何か』友岡 賛 氏(1998)

株式会社とは何か (講談社現代新書)

友岡氏は企業会計の研究者、企業はもうけるために存在する。ならば、何がどこまで許されるのか。(1998)

 

 

どうして株式会社が普及したか?~本書の結論

 

スミスが否定するような非効率性、というデメリットよりも、大資本を調達できる、というメリット、そしてまた、・・・株主の側からみた効率性、というメリットのほうが大きい、と一般にみなされるようになったのである。(143ページ)

株式会社は大資本を調達できる

 

事業規模の拡大が要調達資本の増大、すなわち用意しなければならない元手の増大をもたらす。・・・つまるところ株式という単位をもちいることによって、多くのひとから出してもらって、たくさんの資金(資本)を集めようという株式会社のいわば利用目的からすれば、そこでは、経営者(事業をおこなおうとする者)と出資者とは別、という結果になるのである。そこでは、経営者と(事業をおこなおうとする者)と出資者とは別、という結果になる。(129ページ)

アダム・スミス国富論(1776)でエージェンシー・コストを指摘

 

スミスは、他人の財産を管理する経営者には、自分の財産を管理するばあいと同様の慎重さ、を期待することはできない、と指摘するのである。・・・エージェンシー・コストとは、財産の所有者本人が自分自身でもって財産の管理をおこなっているばあいと、代理人をしてそれをおこなわせているばあいとの比較において、後者の場合において生じるコストである。(132ページ)

株主の側から見た効率性~継続性

 

株式会社に代表される近代、そして今日の企業は、継続的に事業をおこなうことによって効率的にもうけを得るための継続的な組織、として存在している。・・・事業をくわだてて、資本を集めて、終わって、精算して、そしてまた、つぎの事業をくわだてて・・・、といった断続性、それがいかに非効率なものであるかは、指摘するまでもないであろう。(111ページ)

株式会社が認知、そして1844年イギリスの会社法が成立

 

この法律は、法人の設立について、それまでの特許主義に替えて「準則主義」を採用した。・・・準則主義においては、あらかじめ法律によって一定の要件が規定しておかれる。そして、その要件を具備しているばあいには当然に法人格をみとめる、という行き方だった。だだし、通常は、不正な設立などの防止を目的として、その内容を公示させるために登記が要件とされ、つまるところは、たんに登記だけによって法人を設立することができるというものだった。(141ページ)

ふたたび株式会社とは何か?

 

我々は株式会社が継続することが前提であることはまったく疑っていない。大資本を必要とする場合において、経営と資本の分離が一致することは稀であることを我々は知っている。そしてまた株式会社の最大のメリットが株式による資本の調達だということも当然のことと受け入れている。

しかし、株式会社はわずか170年前までは、自由に設立できなかったことはあまり知られていない。株式会社設立は特権であり、バブルを引き起こす弊害もあった。誰でも設立できるようになったのはわずか170年前である。

株式会社の本質は何か?株式会社の歴史はそれを明らかにしてくれる。

蛇足

アダム・スミスの時代、時の造幣局長官だったニュートンは南海株式バブルで大損していた。

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