毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

反知性主義とは、一言で言うと「夜郎自大」のこと~『知性とは何か』佐藤 優 氏(2015)

知性とは何か(祥伝社新書)

佐藤氏は作家、日本には「反知性主義」が蔓延している。政治エリートに反知性主義者がいると、日本の国益を損なう恐れがあると、著者は主張する。(2015)

 
 
反知性主義

 

筆者が言う反知性主義とは、実証性と客観性を軽視もしくは無視して、自分が欲するように世界を理解する態度を指す。反知性主義には、知識をエリートが独占していることに対する異議申し立てという民主主義的側面もある。(4ページ)

本書は、日本の政治が急速に反知主義化していることに対する危機意識を背景に書かれたものである。反知性主義は、歴史修正主義(特にナチズムに対する再評価)、ナショナリズム、国語力の低下などさまざまな局面で起きている。(5ページ)

この道しかない

 

ゴルバチョフソ連共産党書記長が権力の座について、3年反を経ていた。ペレストロイカ(改革)について、「どうもこのままではソ連経済は向上しないのではないか」という国民の不安が生じ始めていた。そのときソ連共産党は、「この道しかない」というスローガンを掲げた。・・・今になって振り返ると、このあたりからソ連ペレストロイカ路線はおかしくなってきた。なぜなら、複数の考え方、複数の選択を認め、社会を活性化していこうとすることでソ連社会を活性化させるという国際基準での民主主義的発想と、ソ連共産党が「この道しかない」という路線を国民に押しつけることが矛盾していたからだ。そして、「この道しかない」というスローガンが掲げられてから3年後の1991年12月に、ソ連国家は崩壊した。(154ページ)

反知性主義とヤンキーの共通点

 

新しい知見や他者との関係性を直視しながら自身と世界を見直していく作業を拒み、「自分に都合のよい物語」の中に閉じ籠もる姿勢だ。コンビニの前にたむろするヤンキーもまさに「自分に都合のよい物語」の中で生活している。(82ページ)

 

“ヤンキー”とは、日本国内において、「周囲を威嚇するような強そうな格好をして、仲間から一目おかれたい」という志向を持つ少年少女を指す俗語を指す。(wiki

 

反知性主義の何がいけないのか?

 

佐藤氏は2点を指摘している。①実証性と客観性を無視することの弊害、②自分の欲する世界の物語に他者へ何らかの行動を強要すること、の2点を掲げる。

ソ連共産党のエリートは国内外の事情に精通していたが、マルクス・レーニン主義に基づく希望的観測にしがみつき、実証性と客観性を無視した。ソ連共産党は国民に「この道しかない」という主張を繰り返し、国民に強要した。その結果がソ連崩壊であった。

反知性主義に対抗する為には

 

佐藤氏は言語能力を高め、論理的に考えることの重要性を指摘する。これから逃れる為には他者と共有できる言葉を正確につかい、論理的に理論展開することが必要だと説く。反知性主義その本人すらも自己欺瞞によって「自分が欲する世界」が正しいものであると思い込み、それ以外のものを知らずに排除してしまうからである。

 蛇足

夜郎自大になってはいけない

蛇足の蛇足

 夜郎自大とは「自分の力量を知らずに、いばっている者のたとえ。」

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