毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

データを駆使したメジャーリーグ・アスレチックス、勝利の本質は「独自の仮説に愚直に取り組む組織論」~書評「マネーボール」

マネー・ボール〔完全版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

アスレチックスのゼネラルマネジャー(GM)のビリー・ビーン(1997年に就任)は、かつて将来を嘱望されながら夢破れてグラウンドを去った元選手だ。彼はジェネラルマネージャー(GM)として統計データを駆使した野球界の常識を覆す手法で球団を改革。チームを強豪へと変える。2013年文庫化

 

ビリー・ビーンGMの革新性は主観性を排し、プロセス化した事

 

 得点を入れることは技術や才能ではなく、手順なのだ.手順を当たり前のものとして日常化し、ベルトコンベア式に各野球選手が諄々に役目を果たしていれば、世間の水準よりはるかに低い労働賃金でチームの得点力を向上できる。 

ビリー・ジーンのプロセス

 

ビリー・ジーンGMは得点に結びつくデータにより客観的に判断するプロセスを前任者から教えられる。

 

「野球に客観的な視点を持ち込むできだ、という考えかたを初めって知った。たしかに、おおぜいの人間の主観的な意見を聴くよりずっといい。当時のわたしはまだ自分の主観にずいぶんとらわれていたけれど、それでも納得がいった」(108ページ)

 

具体的なデータとその解釈(の一部)

 打者:出塁率長打率が重要で、出塁率長打率の比重は3:1

投手:守備的要素を排除した投手力のモデル(与四球、被本塁打奪三振)

f:id:kocho-3:20150102181601p:plainビリー・ビーン - Wikipedia

2002年のアスレチックの年俸は4200万ドル、同じリーグのレンジャーズは1億7000万ドル

ビリー・ジーンGMの成果

 メジャーリーグの人気球団と小降りな球団では選手の年俸総額が2倍以上違う事も珍しくない。資金の豊富な人気球団は有名選手を資金力で集める。一方のビリー・ジーンGMは客観的なデータにより年俸と得点獲得への貢献力で判断し割安な選手を集める。結果として年俸の3倍!の差を跳ね返してリーグ優勝を獲得する。

ビリー・ジーンGMの「本当の」凄さ

 彼は客観的データにそった一つの仮説に基づいたチーム編成とプレースタイルを確立した。メジャーリーグの世界には球団オーナー、ジェネラルマネージャー、監督、コーチ、ヘッドハンター、選手という階層がある。そしてビリー・ジーンはジェネラルマネージャーでありながら、監督、コーチ、選手のすべての階層に一つの仮説に基づいた行動を激しく要求する。チームの仮説は「主観性を排し、プロセスに従う」事。全ての人が主観性を主張する事ができない。それはビリー・ジーンGMも例外ではない。彼は「試合を見ると主観的になるので試合を見ない」というルールを自分にも課している。

ビリー・ジーンGMの「本当の本当の」凄さ

彼の本当の本当の凄さは仮説そのものが従来の固定観念を打ち壊している事である。従来はメジャーリーグでは主観性を主張したがる監督、選手に「組織の運命を委ねる」という固定観念、あるいは既得権益に囚われていた。

蛇足

 組織が自らの仮説に基づき同じ行動をする、勝利の秘訣

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