毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

自動車を発明したカール・ベンツ(1844-1929)というアントレプレナーの2つの成功要因~強い精神力とキャッシュフロー

文庫 自動車と私 カール・ベンツ自伝 (草思社文庫)

 現在のメルセデスベンツの創業者、カールベンツ氏の1925年頃の自伝

 

19世紀末、カール・ベンツは世界で初めて自動車を実用化した。ディファレンシャル・ギアラジエーター、ステアリング装置―現代の自動車に必要なこれらの技術はすべて彼の発明によるものである。

ベンツの「発明の3段階」

 

 

「最初の段階、すなわち着想、全体の構想、勢図、計算から第二段階へ、すなわち実際の組み立て、現実化、実行へと進む」・・・そして最後に「人類とその文明に受け入れてもらうようにまるで物乞いのようにそのドアをノックしなければならない」(108ページ)

 

人類に発明を受け入れてもらう最終段階

 

 

今こそ本格的に、馬鹿にする人々に薄ら笑いや高笑いと戦わなければならなかったのだ。すべての拒否や拒絶をしりぞけ、自分と自分の発明を断固つらぬくことが肝心だった。今は考え悩む発明家がいずれは文明の征服者になること、さまざまな問題との格闘がやがて自動車の未来との格闘になること、これが不可欠であった。(108ページ)

 

 

ベンツはどうしてこれが可能であったか

 

 

 

(第三段階を突破する為の時間を稼ぐ事が可能だったのは)定置式の2サイクル・エンジンが好評だったからである。しかしながら発明の第三段階の克服になると並外れた強い性格の持主であること、しかもそうした人物が粘りと根気を発揮することが不可欠だということを、私はことあるごとに思い知らされた。(109ページ)

 

1886年ベンツはガソリンエンジン車の特許を取得

 

 

電気点火、水冷式、ディファレンシャル・ギアでもって、数人を同時に運ぶ最初のエンジン駆動の乗り物を作り、それを最初に公に示したことである。「1~4人を運ぶガスエンジン駆動の乗り物」に対する特許は、1886年1月29日に私に認められたのである。(178ページ)

 

f:id:kocho-3:20150101235459p:plain自動車 - Wikipedia

ベンツは新産業の創造により世の中を変えた

 

今も自動車が採用する技術は当たり前すぎて、革新性が想像しがたい。ベンツがやった事は1-4人が乗る自動車に必要な要素技術を開発した事であり、自動車というコンセプトをエンジニアリングでのパッケージした事。

ベンツが1886年自動車を発明した時、世間の人々は面白いが実用性に欠けると評価した。「世の人々が人類の恩人に対し、何も頼んだ覚えはない」という態度を示し続けた。

そしてそれを乗り越えるには精神力とキャッシュフローが必要だった。産業用途の2サイクルエンジンは50名の従業員を抱え、大きな利益を産んでいた。新しいコンセプトをキャッシュフローによって実現したのである。ベンツはアントレプレナーだった。ベンツは馬車と自動車の間をつないで、社会を根底から変えた。

蛇足

 

アントレプレナーの語源はフランス語の仲立人。(アントレは前菜、プレナーはリスクテイクする事)

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