仮に自動車産業が転身する事になったら何を選択するのであろうか?
「ブランドのなかのブランド」と呼ばれるエルメス。圧倒的に高価でありながら異常なまでの人気を得た背景には、高水準の職人技術はもちろん、徹底した同族経営、巧みな広報・商品戦略があった。2004年刊
1886年ドイツでベンツとダイムラーによって自動車が発表
(自動車の)評判は急速に高まっていた。馬車工房は瞬く間に存亡の危機にたたされてしまう。・・・19世紀半ばよりヨーロッパ各地で鉄道の敷地が進められたが、実のとkろおそれは馬車にとってはさほど直接的な脅威とはならなかった。・・・ところが時間を気にせず乗り手自身が自由に操作できる自動車は、馬に代わる進化した移動手段として歓迎された。(26ページ)
馬車工房、エルメスはどうしたか?
エルメスはフランスを代表する馬具工房として、苦境に陥った同業者の吸収などにより馬具製造の伝統を保つよう努めるが、これまでの販路では限界が来ていた。・・・まずは、いまだ馬具の需要がある外国への販売だ。(エルメスの社主の)エミールは持ち前の行動力を活かしてロシアに赴き、皇帝ご用達の栄誉を受けたうえ大がかりに商談を成功させるなど精力的な営業活動を展開した。(28ページ)
更に多角化に取り組む
1890年代にはエルメス最初の鞄「サック・オータクロア」など、旧来の馬具工房からは想像もつかない商品が作られ始めた。現代に例えるならば、メルセデスベンツやトヨタが大変な不況のなかで自動車製造の技術を活かしてインテリア業界に進出するようなもので、通常は思いつかない発想の転換だろう。(29ページ)
エルメスが活かしたもの
馬具工房としてフランス宮廷御用達、皮を使った製造技術、そして希少性、これらを活かしてファッション業界に進出した。その後エルメスはファスナーを採用するなどファッション性と機能性で知名度を確立していく。
今から見ると順当なビジネス展開の様に見える。しかし当時女性が革製の鞄を使うという風習はなかったとの事である。女性は布製の小物を使うのが普通で、エルメスは製品を売る前に、新規需要を創出していたのである。その後エルメスは世界大恐慌を挟んで、テキスタイル、香水など更に多角化を進め現在に至る。
現在のブランドビジネスは100年の歴史を持つ事がわかる。今後新技術の誕生によって既存産業が存亡の危機に直面するのであろう。その時どんなビジネスモデルが誕生するのであろうか?
蛇足
自動車産業が需要消滅に直面したら、何を残るのか想像してみる。
こちらもどうぞ
他人との差異を示す「記号」としての商品、そして消費社会~45年前のボードリヤールの古典から学ぶ - 毎日1冊、こちょ!の書評ブログ