思考する、自己表現するとは何か?~コンピュータとの比較によって分かる事
ヒリス氏は進化論的コンピュータ、人工ニューロン、超並列コンピュータの第一人者。著者が歩んできた道をたどりながら、コンピュータの可能性を解き明かした名著。原著は1998年 発刊。
239ページ 視覚に関するサルの脳神経回路=重要性のマッピング
画像の情報量
ある情報の情報量をそのデジタル化データの大小で捉えてしまう考え方は、我々が情報について感じる直感的なイメージと相容れない。それはコンピュータが情報の意味を考慮せず、有用な情報も無用な情報も同等に扱うからである。近辺の砂浜の一粒一粒が情報の受け手にとって重要であるかないか、コンピュータはその点をまったく考慮することなく砂利の一粒一粒をピクセルで忠実に表現する。
情報の重要性の判断が必要
画像のどの部分の情報が重要で、どの部分の情報は不要かの判断は、その画像の使い方や使い手によって変わってくる。したがって、どの部分が有意でどの部分が無意味かを決定するのは非常に難しい。・・・ピカソのような偉大な芸術家は、複雑な情景を何本かの線に「圧縮」できるかもしれない。しかしその過程で彼はどの部分をどのような線でかけばいいかの判断を下している。
意味のある情報だけを抽出=情報の圧縮
意味のある情報だけを対象にコンピュータがデータ圧縮できるのであれば、データサイズと情報との間に我々もそれほど違和感を感じないかもしれない。
171ページ ピカソが最も重要と考え線だけ描いた
ピカソのスケッチでコンピュータができる事、できない事を考えてみる
・ピカソのスケッチの原情報をデジタルデータに変換する→可能
・ピカソのスケッチの描画手順をデジタルデータに変換する→可能
・ピカソが元のイメージから情報を圧縮しスケッチを描画したプロセスをアルゴリズムに置き換える→不可能
思考する事=情報の重要性を判断
ピカソは描きたいイメージから情報の重要性を判断し、複雑な情景を何本かの線に置き換えた。思考する、という事が複数の情報を結びつけ、重要性を判断する事だと認識できる。そして重要性の判断は100人いれば100通りある。同じ風景を見ても同じスケッチ=圧縮データにならない。スケッチをする人の情報の重要性の判断が違いとなって現れる。思考する事とは関係性を判断する事であり、表現とは独自の関係性を発露させる事と考える。
蛇足
スケッチを描くには技量も必要。