毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ジェームスワットの蒸気機関とハイブリッドカープリウスの共通点~遊星ギア

鉄道の誕生 (創元世界史ライブラリー)  湯沢氏は比較経営史の研究家。本書では蒸気機関導入以前の初期鉄道に遡り、本格的鉄道登場の背景とプロセス、さらにその経済社会へのインパクトを経済史・経営史的観点から考察し、鉄道誕生の秘密とその意味を明らかにする。の第一人者による鉄道草創期の本格的通史。

 

鉄道の前の蒸気機関に関連し「遊星ギア=惑星ギア」に関する記述が目に止まる。

蒸気機関のジェームスワットの特許~遊星ギア

1776年には実用的な蒸気機関を完成させ、1781年には遊星歯車機構に関する特許を獲得した。これは往復運動を回転運動に転換する上で極めて重要な発明であった。

この特許の表題も長い。「蒸気あるいは火力による振動あるいは往復運動を、軸あるいは中心点の周囲を連続的に回転あるいは円形の運動にする新しい方法であり、これによって工場その他の機械を動かす原動力とするための特許」

これはまさにニュートンの観測した「太陽と惑星」の天体図を模写したものに他ならない。(61ページ)

 

遊星ギアplanetary gear mechanismとは(Wiki)

太陽歯車(sun gear)を中心として、複数の遊星歯車(planetary gear)が自転しつつ公転する構造を持った減速(増速)機構である。「遊星」はplanet(惑星)の別の訳語で、その構造を太陽系に見立てた事に由来する。当初、ジェームス・ワットが蒸気機関(ビームエンジン)の往復運動を回転運動に変換する際、クランクを使用した特許を回避する為にクランク軸の代わりに遊星歯車を使用した。

 

ハイブリッドカープリウスの遊星ギアプリウス・ドライビング・シミュレータより

プリウスには普通の車には必ずついているはずの、マニュアル変速機もトルコンATも、CVTも付いていません。 その仕組みは「動力分割機構」と呼ばれるたった一つの遊星歯車にあります。

 

f:id:kocho-3:20140314074025p:plain動画が素晴しい!

ングギア:モーターとタイヤが連結(イラスト緑の部分)

プラネタリキャリア:ガソリンエンジンと連結(イラスト黄色の部分)

サンギア:発電機と連結(イラスト青色の部分)

プリウスは動力分割機構を間にかませることによってエンジンの回転の一部を発電機に「横流し」しています。低速で走っているときはより多くのエンジン出力が発電機に横流しされます。高速になるにしたがってこの横流しの量は減り、ついには発電機をモーターがわりに回転させることでエンジンの回転を増速します。

 

蒸気機関とハイブリッドカーの共通点、遊星ギア

ジェームスワットは蒸気エンジンの上下運動を遊星ギアにより回転運動に変えた。プリウスはエンジンとモーターと発電機の力を遊星ギアにより統合してタイヤに伝えている。ジェームスワットの遊星ギアの仕組みを認識しているとプリウスの仕組みも認識できる。

蛇足

私はプリウスはエンジンとモーターで発電は「モーターの逆回転」だと思っていた。構成図を何度も見てきたが気づかなかった。ディテールの情報が統合されて認識できる。世の中分かるものだ。