毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

会社にあって、市場にないものは何か?~『システムの科学』H・A・サイモン(1987)

 システムの科学

 大組織の経営行動と意思決定に関する生涯にわたる研究で、1978年にノーベル経済学賞を受賞した。(第3版1987年)

 

 

人工物とは何か?

人工物を記述するにあたって中心的なことは、内部システムを外部システムに結びつける目標である。内部システムは、自然現象を組織化して、ある範囲の外部環境のもとで特定の目標を達成できるようにしたものである。(15ページ)

人間はシンプル、複雑なのは環境

一つの行動システムとして人間をみると、それはきわめて単純なものである。その行動の経時的な複雑性は、主として彼がおかれている環境の複雑性を反映したものに他ならない。(95ページ)

問題解決とは

人間の問題解決は、非常にまずいものから非常にすばらしいものまで含めて、すべて試行錯誤と選択性のさまざまな組み合わせにほかならない・・・さまざまな進路が試みられ、この結果が記録され、そしてその情報が次の探索の指針になるというものである。(233ページ)

限定された合理性メカニズム

(経営においては)すべての代替案を知るというわけにはいかないこと、外生的な事象について不確実性があること、および結果を計算することができないことを意味そていた。・・・(経営者は限られた経営資源の中で)選択に際し要求水準を満たすような代替案がみつかれば、ただちに探索活動をやめ、その代替案を採用する。私はこのような選択様式を「満足化」とよんだのである。(281ページ)

経済的進化のメカニズム

・・・企業はその仕事の大部分を標準的な業務手続き-定型化され、経営者や従業員により世代をこえて受け継がれていく、日常的な意思決定のためのアルゴリズム―によって成し遂げるということを示唆している。したがって(経済的な企業の)進化は、これらアルゴリズムの革新と変革を生み出すすべての諸過程から生じる。(57ページ)

我々は本当に市場経済に生きているか?

資本主義社会の経済単位は、大部分が企業であるが、企業はそれ自体が階層組織であり、しかもそのうちのいくつかはきわめて大きなものであるが、そこでの内部活動には市場メカニズムはほとんど利用されていないのである。・・・市場経済の典型とみなされているアメリカ経済でも、人間が担う経済活動の80%は、企業などの組織の内部環境の中で行われているのであって・・・われわれは市場に対すると同等の注意を組織にも向けなければならないからである。(38ページ)

 

システムの科学

そもそもシステム、あるいは人工物とは何か?目標を持つもの、ということになる。それは企業という組織であってもコンピュータ・システムであっても一緒である。しかし違うのは人間の作る組織は限定された合理性メカニズムでしか判断できない、ということである。限られた経営資源の中で組織を変革し続ける組織は生き残る可能性がある。しかしひとたび目標を忘れたとき、組織は衰退に向かう。結局組織の強さはどういう目標を設定できたか、そしてそれを忘れないでいられるか、ということになる。システムに必要なもの、それは目標、である。

蛇足

市場そのものは目標を持たない

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