誰も、組織を100%所有してはいけない~『 歴史からの発想―停滞と拘束からいかに脱するか 』堺屋太一氏(2004)
歴史からの発想―停滞と拘束からいかに脱するか (日経ビジネス人文庫)
堺屋氏は経済官僚出身の作家、中国史に学ぶ「勝てる組織」の作り方(単行は1983年、文庫は2004)
モンゴル帝国の出現は、世界史上、おそらく最大の大事件であろう。この帝国は最盛期において史上最大の版図をもったばかりでなく、その支流は19世紀まで各地に残存したのである。(197ページ)
画期的な発想の結果として世界帝国が生まれたというよりも、むしろ世界帝国をつくろうという強い一貫した意思が、・・・(大量報復戦略、秘密警察、宗教の自由という)画期的発想を生んだのだということである。(221ページ)
明確な単一の目標~勝てる組織①
ジンギス・カンのモンゴルは「勝てる組織」の典型であることは、誰しも認めざるを得ないだろう。・・・そこから逆に「勝てる組織」の要件を考えると「明確な目的を持ち、構成員がそれをゆるぎなく信じている組織」だということになるだろう。・・・モンゴル帝国は、軍事的勝利という明確な単一の目的を持った組織だった。また、その目的を何よりも大事なものと、当時の蒙古人はゆるぎなく信じていた。(226ページ)
既成概念との闘い~勝てる組織②
組織の構成員が、明確な単一の目的をゆるぎなく信じるために最大の障害になるのは、既成の権威であり、常識的な概念である。したがって、「勝てる組織」をつくるには、その妨害となる既成の権威と常識的概念を構成員からいかにして取り除くかが重要な課題になる。(236ページ)
勝てる組織論~勝てる組織③
組織論は「(たとえばジンギス・カンの様な天才的リーダーである)人材に頼らず組織を強化するための学問」(ベルギーナ)である。・・・その第一は、いわゆる権威と権限の分離である。権威と機能は必ずしも一致しない。特に、技術や社会情勢の変化が著しい世の中ではそうでる。「権威は過去によってつくられるが、適性は絶え間なく未来に進む現在によって決まる」からだ。・・・(組織論的に観て)権威と権限の分離というのは、最も難しい分業だ。なぜなら、権威と持って権限を持たない、あるいは権限を持って権威をもたないということは、人間の本性に反するところがある。・・・「権威を欲せず権限に尽くす」-これをベルギーナは「匿名への情熱」と呼び、それこそが組織人の使命だとした。そして、それを掻き立てるように仕向けられる組織こそ、最上の組織だと言う。(244ページ)
組織のメンバーの目標
「組織の目的を達成することに幸福を感じる者だけが、よく組織を強化できる。それ故、強い組織は集団的な錯覚の中にこそある」(8ページ)
歴史からの発想
堺屋氏はモンゴル帝国が史上最高に成功した帝国であるという。モンゴル帝国は世界の東西を統合し、東西間の移動が容易になった。ジンギス・カンは天才であったが、それでは天才でなければ組織化はできないか?堺屋氏は権威と権限の分離が肝である、という。権威と権限が分離することによって組織の目的だけを追求することが可能となるという。それでは権威と権限を分離させるにはどうしたらいいのか?どうしたら権威が空洞化せず、権限は権威を要求ないで済む組織を設計できるのか?チンギス・ハンの様な天才に依存しない組織は機能しえるのか?残念ながらこの答えは一つではない。
蛇足
何で勝つか、自由に決めていい
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