株価と政権支持率の相関関係が示すもの~『資本主義の克服 「共有論」で社会を変える』金子 勝氏(2015)
資本主義に、制度やルールの空白が生じ、「独占」が生まれている。(2015)
株価と内閣支持率の関係
株価が上昇している時は内閣支持率が高まり、株価が下落すると、内閣支持率が低下する。株価が落ちてしばらく低迷すると、1年前後でほとんど内閣が交代していくことになる。安倍第一次内閣の後、福田康夫、麻生太郎、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦と、内閣はみな1年前後で交代することになった。・・・政治の論理として考えれば、交代した当社の内閣支持率はいいが、株価が低迷すると、すぐに支持率が落ちてしまうために、首相の首をすげ替えざるをえなくなるのは自然であろう。
なぜ株価と支持率がリンクするのか?
政府の「リスクをとって株に投資しろ」という掛け声のもとに、一般の人々が株や投資信託を購入するようになったことが背景にある。・・・株価が上がれば、企業の持っている資産価格は上がるので、それだけで決算が良くなって、本業の悪いことが隠れてしまうのである。輸出企業にとっては円安も同じ効果がある。それゆえ円安・株高を誘導するために金融を緩和してくれという要求が、経済界を中心に政権に常に加えられるようになってくる。そうすると政府は、財政赤字を出して、国債を買って、マネーをどんどん供給して、マネーをだぶつかせる。(138ページ)
財界の既得権益化
シュンペーターは「資本主義・社会主義・民主主義」において、新技術と新しい産業のフロンティア自体が消滅したのではないとしたうえで、規制緩和によってベンチャーが生まれ、イノベーションが促されるとは書いていない。むしろ限界的企業が増えても、イノベーションは起きないと述べている。イノベーションが起きない最大の原因は、大企業が官僚化し経営者が無用化してしまう、つまり大企業の経営者精神の衰退がイノベーションを妨げているとしている。(142ページ)
資本主義の克服
資本主義は常に新しいフロンティアを求めきた。日本の大企業は円安と規制緩和により、短期的な収益機会を求め既得権益を求め続けるとする。短期的に既得権益を享受することと、中長期的にイノベーションを実践することが両立しないのであれば、短期的な動きと中長期的な動きでは担い手が違ってしかるべきである。
現在の資本主義の問題点は、政治、経済ともに短期的な視野でしか考えていないことにある。株価と支持率の相関性は、我々は近視眼にしか考えていない、ということを示している。資本主義が問題なのではなく、資本主義の使用の仕方が問題なのである。
蛇足
近視眼だけなのが問題である。
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