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毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

改めて思う、不足とは配分の問題である~『牛肉資本主義―牛丼が食べられなくなる日』井上恭介氏(2015)

牛肉資本主義―牛丼が食べられなくなる日

井上氏はNHKの番組プロデューサー、リーマンショックの後、 息を潜めたかにみえた「マネー資本主義」。 このグローバルマネーが次のターゲットに選んだのは、「牛肉」だった。(2015) 

 

穀物はだぶついている

2015年9月30日現在、牛肉も大豆をはじめとする穀物も、国際相場は安定している。っ牛肉でいえば、1年前に比べ17パーセント安の1キログラムあたり約6万4400円、大豆でも13%安の1トンあたり約3万8800円である。要は国際市場で「だぶついて」いる。(4ページ)

牛の飼料となる穀物の変動

中国が輸入を急拡大する大豆では、世界地図の塗り替えが起きていた。世界一の食料輸入国だった日本の存在感が、中国の登場で小さなものになっただけでなく、世界一の食料輸出国の座に君臨してきた「超大国アメリカ」の姿までもが変わり始めていた。さらにアメリカは大豆の輸出量で南米に世界一の座を明け渡すまでになり、アメリカの穀物メジャーが独占的に握ってきた価格交渉の主導権を失う事態が進んでいた。(20ページ)

ブラジルの内陸の草原地セラード

(オーナーの)ブサット氏に畑は、広さ460キロメートル。東京ドームの約9800個分。それでもブザットしはセラードの開発、農地の拡大を今も続けているという。・・・ブザット氏の事務所にいって、衝撃的な場面に出会った。この「いち農家」が中国系企業や穀物メジャーを相手に価格交渉を仕掛け、勝っていたのだ。年に30億円も売上るようになったその「大きさ」が、アメリカの穀物メジャーが牛耳ってきた価格の主導権をたぐり寄せ、握ってしまったのだ。(91ページ)

資本主義の視点から

グローバル化と共に「もっと食べたい人」、「もっといいものを食べたい人」が増える中で、今後人類はその欲望を満たす生産の増加を果たせるかのか。10兆円以上の運用資産を操って行う投資でその難題に答えを示し、その成果として20兆円を超える売り上げを関連企業で上げ、年率20%を超える利回りを創業以来39年、投資家にリターンを出し続ける「巨人」(KKRという名のプライベートエクイティファンド)に直接聞いてみたいと考えたのだ。(152ページ)

KKRファンドの経営トップ、クラビス氏の答え

「やるべきこと、地球にとって一番大切なことをすれば、いいのだ」(154ページ)

「(綺麗な)ビジョンは語るだけではなく、実行に移さなければ意味がありません。私が求めるのは「現実を変える」という結果を出すことです。」(155ページ)

「世界中で問題となっていること、それは『不足』なのです。水の不足、食料の不足、そうした不足が地球規模で問題となっているのです。」(157ページ)

牛肉資本主義

 本書の副題は「牛肉が食べられなくなる日」である。中国の爆買いによって、飼料が高騰し日本で牛丼が食べられなくなるかもしれない、という問題意識からスタートしている。

私は本書を読んで逆に、飼料高騰のリスクは今後“理論的には”遠のくであろう、と実感した。ブラジルのセラードの開発割合は米国に比べ未だ1/3程度であり、大きな拡張余地がある。そこでは大豆を中心とした需要に応えようとする農業主が存在する。

またKKRというファンドが20%を超えるリターンを上げていることにも驚かされた。更にクラビス氏の経営トップのメッセージはストレートに受け止めるべきであり、綺麗ごとと断ずるのは抵抗がある。

私には作者の意図とは違う所で、人類が飢餓を克服したことを思い起こさせる。

我々は牛丼を食べ続けなければいけないか?ステーキを食べ続けなければいけないのか?牛丼チェーン店でも豚丼や鳥丼も出す時代である。マクドナルドの経営危機が表面化する時代である。我々は牛肉だけを食べなくても、いいはずである。

資本主義が今やろうとしていることは、食料の不足、水の不足、といったテーマで心理的に超過需要を引き起そうとしている事ではなかろうか?本書は逆説的にこの事にきづかさせてくれる。そしてこの事に気づくことが超過需要を消滅させる方法でもある。

蛇足

 不足の問題とは配分の問題である

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