毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

飢餓を克服した人類は都市化をすすめる~『食糧と人類 ―飢餓を克服した大増産の文明史』R・ドフリーフ氏(2016)

食糧と人類 ―飢餓を克服した大増産の文明史

 ドフリース氏は持続的開発モデルの研究者、科学力と創意工夫で生産力を飛躍的に向上させ、度重なる食糧危機を回避し、増加してきた人類の歴史をたどる。(2016)

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地球の上で生命は循環する

地球は十数枚のプレートに覆われ、それがゆっくりと動くことで大陸が移動し山が誕生する。これが炭素を循環させる動力源になる。・・・炭素は生命にとってひじょうに重要な元素だが、動植物はそれだけでは生きられない。成長し生き延びていくにはたくさんの栄養素が必要だ。たんぱく質をつくるための窒素や、骨を作るためのリンは、地球上の生命に欠かせない。植物は土から、動物は植物を食べて栄養を得る。地球の基本的なメカニズムは炭素と同様に窒素とリンも循環させ、文明を支えている。(45ページ)

農業とは

作物を1回収穫すれば、土壌から養分が失われる。窒素やリンをはじめ、植物の必須栄養素の種類は10にものぼる。使われた養分を補ってもとの成分構成に近づけなければ、生命維持に必要な養分を使い果たしてしまい、取返しがつかなくなる。(81ページ)

20世紀前半

定住生活のふたつの難問―土壌の養分の補給、人間の消費エネルギーを極力減らして収穫量をあげるーの解決策が登場し、さらに人類が自然界にある方法で介入xすることで20世紀後半の人類大躍進を迎えることになる。…空中の窒素ガス、地中のリン鉱石化石燃料を利用した無機肥料が普及する・・・(165ページ)

20世紀後半

人類が開発したテクノロジーー土壌に養分を補給する、古代の太陽エネルギーを取りだす、病害虫・雑草の被害を抑える、遺伝子を組み替えるーがすべて緊密に結びついて、いよいよ食料大増産を達成する人類大躍進の時代を迎えた。

振り返ってみれば、化学肥料への転換が実現したのは工業用の石炭と機械に使う石油があったからだ。…遺伝の仕組みを利用していなければ、世界中で収穫量が急増することはなかっただろう。(244ページ)

農耕生活から都市生活へ

20世紀のはじめ、地球の人口は20億人足らず、都市で暮らす人は100名につき15人未満だった。20世紀の終わりにはすでに人口が60億人を突破した。…2007年5月には、(都市で暮らす人が)半数を超えた。都市化していくヒトという種を養うために、じつに地球全体の35パーセントの土地が(農業に)あてられていた。(246ページ)

食糧と人類

 

人類は狩猟採取生活により投下したエネルギーを上回るエネルギーを成果として得ようとしてきた。農業はこれを更に効率的に行うことを可能にし、都市化が始まる。そして現在人類は農業に化石燃料を投下することで更に食料を増産することを実現した。それは更に都市化を押し進める。著者によれば「21世紀半ばには、世界人口の8割近くが都市住人になっている可能性がある。」(265ページ)という。定住を始めて約1万2000年、人類は都市化の最終段階に到達しようとしている。

蛇足

 

農業とは必要な養分と水を投入し太陽エネルギーを食糧に変えること

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