毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

国家にしかできない、税金を徴収するということ~『お金の流れでわかる世界の歴史』大村大次郎氏(2015)

お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力・・・・・・はこう「動いた」

 大村氏は国税調査官出身のライター、ローマ帝国滅亡は、徴税システムの破綻が原因だった。(2015)

 

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徴税システムの重要性

古代から現代まで、その国の王や、政府にとって、一番、面倒で大変な作業というのは、徴税なのである。税金が多すぎると民は不満を持つし、少ないと国家が維持できない。また税金のかけ方が不公平になっても、民の不満の材料になるし、徴収のやり方がまずければ中間搾取が多くなり収入が枯渇する。

古今東西、国家を維持していくためには、「徴税システムの整備」と「国民生活の安定」が絶対条件なのである。(20ページ)

古代エジプトの徴税システム

古代エジプトの行政機関が優れていた点は、書記(徴税役人)がれっきとした国家の官僚だったという点である。書記は、国家から給料をもらい、官僚の仕事として税金の徴収を行っていたのだ。現代から見れば当たり前のように見えるが、中世までは徴税人というのは、請負制によるものが多かったのだ。国家から徴税権を得て、決められた額の税金を国家に払うのである。徴税人は、税を多く取れば取るだけ自分の収入になるので、不正に税を取り立てるケースが多かった。(22ページ)

国の栄枯盛衰には一定のパターン

徴税がうまくいっている間は富み栄えるが、やがて役人たちが腐敗していくと国家財政が傾く。それを立て直すために重税を課し、領民の不満が渦巻くようになる、そして国内に生れた対抗勢力は、外国からの侵略者によって、その国の政権(王)は滅んでいくのだ。(24ページ)

お金の流れでわかる世界史

本書によれば古代エジプトローマ帝国、近代のフランス革命前まで、多くの帝国、王権が徴税権の乱れによって消滅していったという。多くの場合、裕福な者が徴税特権を得て、更に裕福になる一方民衆には重税を課す、という形にはまり込む。徴税請負制度が中間搾取することにより、長期的には国家財政も民衆も疲弊することとなる。

先進国ではタックスヘイブンがあるために、富裕層・大企業への課税が減少しその分中間層以下に課税が増える傾向にあるという。結果として富裕層・大企業が「税金を逃れる特権階級」になっているのである。長期的に見て、国家を必要としない資本主義が存続できるのであろうか?

蛇足

 

永遠に存続した国家は存在しない。

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