毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

納豆の起源を東南アジアから考える~『納豆の起源』横山 智氏(2014)

納豆の起源 (NHKブックス No.1223)

横山氏は地理学の研究家、ナットウの起源は、いまだ明らかでない。著者は近年、東南アジアからヒマラヤまで広範な地域のフィールドワークを敢行。(2014)

 
 
納豆とは

 

日本の納豆は、納豆菌で発酵させた無塩発酵大豆食品と分類される。

納豆の名称は1050~1060年頃藤原明衝によって書かれた『新猿楽記』の中で「精進物、春、塩辛納豆」とあるのが初見。

現在の市場規模は1000~1200億円程度、一世帯あたりの消費量は4000円弱になる。また納豆の消費量は直近30年でほぼ4倍になったという。

<市場を読み解く>豆腐・納豆市場 - Biz STYLE

 

 

日本の納豆は中国で生まれたか?

ダイズもイネも大陸から伝わってきた作物であり、日本だけが偶然に納豆ができる条件を有していたわけではない。よっと、日本以外に納豆の起源を求めることもできよう。しかし、日本でも稲ワラと煮豆が一緒になるような環境は多くあったことは容易に想像でき、偶然に糸引き納豆が作り出されたことは否定できない。日本で糸引き納豆が生まれたとする説も十分に考えられるのである。(47ページ)

東南アジアの納豆

東南アジア地域では、粒状納得の地域、乾燥センベイ状納豆の地域、そして引き割り状納豆が西から東へと少しづつ重なり合いながら分布していることが分かった。…またヒマラヤ地域に関してはネパール系民族がつくる納豆は干し納豆で、アルナーチャルのチベットビルマ系のモンパ族がつくる納豆は味噌状納豆であり、東南アジアとは完全に異なる形状であった。(288ページ)

粒状納豆の場合、必ず菌の供給源として植物の葉を使って大豆を発酵させている。その一方、乾燥センベイ状納豆、ひき割り状納豆、干し納得、味噌状納豆などの粒状納豆を加工したものは、植物の葉を使わない場合も多い。(290ページ)

納豆の起源地は一元論ではなく、おのずから多元論となる。…茹でた大豆を放置しておくと、納豆になるという極めて高い可能性をベースに考えたものである。(291ページ)

 

f:id:kocho-3:20151201081554p:plain本書292ページ

納豆はどこで生まれたのか?

結論から言えば、日本で生まれたかもしれないし、中国から伝来したのかもしれない。横山氏は東南アジアでフィールドワークをした結果、東南アジアには少なくとも4か所、東南アジア・タイ系、東南アジア・カチン系、ヒマラヤ・チベット系、ヒマラヤ・ネパール系に独自の納豆の起源があると分析する。東南アジアで納豆が食されていた、ことは私の想像を超えていた。

人は消化の悪い大豆を煮て食してきた。これを放置すると、日常空間にありふれた枯葉菌によって発酵が起こる。どこか特定の地域で発生したというより、自然発生的に生じそれが食文化として定着した地域が東南アジアだけでも4か所あったことになる。日本の納豆もまた、日本で生まれたかもしれないし、中国から伝来したのかもしれない。納豆の起源に必要以上にこだわることに意味はない、と気づかされる。

蛇足

 

我が家の消費量は平均値を大幅に超過していた!

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