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毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

どうして皆、アニメの昔話になると熱く語ってしまうのか?~『コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと』川上 量生 氏(2015)

映画・芸術 新刊

コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと (NHK出版新書)

 

川上氏は実業家であり"ジブリプロデューサーの見習い"、本書はその卒論。(2015)

本書、はじめに

コンテンツとはなんだろう、クリエーターとは何をやっている人たちなのか。いわゆる天才クリエーターとふつうのクリエーターの差はいったい何だろうか。スタジオジブリ鈴木敏夫プロデューサーに弟子入りすることになってから、ぼくが毎日、考えるようになったテーマです。(9ページ)

 

アリストテレースのコンテンツ論

「まず、再現(模倣)することは、子供のころから人間にそなわった自然な傾向である。しかも人間は、もっとも資源を好み再現によって最初にものを学ぶという点で、他の動物とことなる。」(アリストテレース詩学岩波文庫 27-28ページ)

コンテンツの定義

アリストテレースの定義は)なぜ人間社会にコンテンツがあるのかという、進化心理学的なコンテンツの起源の説明としても十分に検討に値する仮説でしょう。現実世界を模倣したコンテンツをつくることを好む本能を持つことが、人類という種の生存に有利だったということです。・・・だんだんとコンテンツの本質らしいものが見えてきました。ぼくのとりあえずの結論としては、コンテンツとは現実の模倣=シミュレーションである、というものです。(41ページ)

アニメーションとは?

どうやらアニメは子どもたちのもの。そうつねづね語っている宮崎駿監督の言葉は、本当だったようです。アニメの特徴とは情報量の少ないことです。だから子どもに分りやすい。だから子ども向けの映像表現としてアニメは発達した。ところが日本では情報量が増えたアニメが登場したことで、大人もアニメを見るようになった、ということらしいのです。(48ページ)

現実世界と脳の中のイメージ

人間は現実世界のイメージを脳のなかに持っています。それは現実世界の情報をそのままコピーしているのではなく、特徴だけを抽出して組み合わせてイメージをつくっているのです・・・宮崎駿は引退会見で、「アニメーションとは“世界のひみつ”を覗き見ること」という言葉を残しています。「風や、人の動きや、いろんな表情、体の筋肉の動きなどに、世界のひみつが隠されている」とも語っています。アニメーションで“世界のひみつ”をのぞき見るとは、脳のなかにある「世界のひみつ」を見つけてアニメーションで再現することでしょう。それはアニメーションという言葉を「コンテンツ」に置き換えても成立すると思うのです。(91ページ)

コンテンツは昔からあった

コンテンツとは、内容、中身という意味の英単語と説明される。内容、中身だけでは何の内容、中身かを説明していないにも関わらず、我々は無意識にコンテンツという言葉を使っている。川上氏はアリストテレースを引用して「コンテンツとは現実世界の模倣である、」と定義する。更にコンテンツの意味を進めて「脳の中の現実世界の特徴のイメージ」と再定義する。そしてアニメーションを例にコンテンツの意味を分析する。

アニメーション、あるいはコンテンツはクリエーターの脳の中の情報に従って、現実世界を簡単な線でデフォルメして表現したものである。実写に比べ線を取捨選択することで現実世界以上にリアルに表現している。

子どもの頃に見たアニメは現実世界以上のリアリティを持っては我々の原体験として記録されている。考えてみれば実写ではそのままでは情報量が大きすぎる。アニメは情報が圧縮されて記憶に止め易くなっていたのだ。

我々は今でも子ども時代のアニメの話を始めると熱く語る。アニメが現実世界を、実写より分かりやすく、記憶しやすい形で表現しているからだと気づく。

蛇足

 

子どもの頃に好きだった実写TVの主人公の顔を思い出せますか?

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