毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ネアンデルタール人はホモ・サピエンスより生存期間は長かった~我々はここまで認識している

 ネアンデルタール人 奇跡の再発見 (朝日選書)小野氏は考古学の研究家、

1856ネアンデルタール人はドイツネアンデルタール渓谷の石灰採掘所で発見

 実際に骨が発見されたのは、18568月初旬の事だ。(中略)フェルトホーファー・キルヒェ洞窟に隣接する小フォエルトホーファー洞窟である。「大理石工業ネアンデルタール株式会社」の共同社主の一人であるヴィルヘルム・ヴィカーズホーフが偶然に、採掘作業の視察のために現 場にやってきた。(33ページ)

 

f:id:kocho-3:20140418080825p:plain発見された人骨は16

ネアンデルタール人とは 

ホモ・ハイデルベルゲンシスは、アフリカ、ヨーロッパ、そしておそらくアジアの一部にも及ぶ広域に分布した中期更新世の人類であるという。この共通の祖先からネアンデルタール人が斬進的にヨーロッパで進化分岐したのが約30万年前、現生人類がアフリカで進化分岐したのがおよそ20万年前という仮説である。小フォエルトホーファー洞窟で発見されたネアンデルタール人が生きていたのは、この系統の最後の段階に近い約4万年前のことである。

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およそ30万年に及ぶネアンデルタール人の存続期間には、寒冷期も温暖期もあった。しかし、存続期間の後半に典型的なネアンデルタール人は、ヨーロッパの最後の氷期の寒冷な気候に適応して生きていた。もちろん細かくみれば最後の氷期においても寒暖の区分があった。そしてネアンデルタール人は最終氷期の最寒冷期の前にこの世界から姿を消す。(63ページ)

 

1996ネアンデルタール1(1856年に発見されたそのもの)をDNA分析
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右上腕骨の骨幹から重さにして3.5グラムの骨片を切り出し、DNA分析が実施

分析結果は語る。ネアンデルタール人ミトコンドリアDNAの延期配列は、現生人類の遺伝的変異の外にある。つまり現生人類のものとは異なり、重ならない。今回の分析はネアンデルタール人は原生人類の遺伝に寄与しなかったことを示唆する。ネアンデルタール人は現生人類への遺伝に寄与することなく絶滅したことを推定させる。(112ページ)

 

ネアンデルタール1は放射性炭素年代調査も~4万年前と特定

 ネアンデルタール1の骨には保存のために過去にニスが塗布されたことがわかっているので、測定上の汚染を防ぐため、ミトコンドリアDNAの分析をする1996年に右上腕骨から切り出した長さ2.4センチ、重さ3.5グラムの骨変から試料をとることにした。骨表面からの採取を避け、切り出した骨片の骨髄密質を長軸方向に平行にドリルで取り出した。その結果は較正年代で4394±512年であった。(169ページ)

 

 

本書のタイトルは「奇跡の再発見」、ネアンデル渓谷は19世紀の産業革命期の徹底的な石灰岩採掘で削平され、洞窟自体が存在しない。143年を経て、奇跡的に洞窟の地点が特定された事を指す。

ネアンデルタール人の存在期間は30万年以上、そして我々人類はまだ20万年しか存続していない。

 

蛇足

人類もネアンデルタール人と同様いつか滅びゆく種族である。