毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

人類70億人を分子生物学の知見から定義してみる~この気付きが日常を愉しくする。

 

人類20万年 遙かなる旅路 著者、アリス・ロバーツは英国ブリストル大学の解剖学者、古人類学の研究家。本書は英BBCとの企画がベースとなっている。「 時代をさかのぼればヒト属には多様な種が存在していた。しかし、3万年前までには、現生人類とネアンデルタール人の2種を残すのみとなり、そして今日、我々だけが残った。 現生人類が約20万年前アフリカで誕生したことは、様々な証拠からほぼ確実となっている。 」

 

本書をベースに情報を整理。

ミトコンドリアDNAによるトレース

ミトコンドリアDNA(mDNA)は、細胞名でのエネルギー変換をコントロールするという重要な任務を担っているので、自然選択による容赦ない選択を免れており、変異が蓄積されやすく、変異スピードも早い。(37ページ)

一言で言えばmDNAは重要な遺伝子で過去にトレースし易い。現在の人類の起源に関する理解はmDNA遺伝子の系統を分析する分子生物学がベースになっている。

アフリカ単一起源説

・ヒト族の最初は700万年前アフリカで誕生した。

・現世人類も属するヒト族(ホミニン)には幾つかの種があり、その一つがネアンデルタール人、現世人類とネアンデルタール人が遺伝的に分岐したのは60年年前、ネアンデルタール人は2万年4000年前に絶滅した。

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ネアンデルタール人のDNAが語るヒトの進化 - JT生命誌研究館

・現在の人類の直接の祖先は20万年前、アフリカを起点に世界に広がっていった数千人程度の小さな 集団である。

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世界地図に広がったミトコンドリアDNA系統のツタ(本書154ページ)

 

現在の分子生物学から得られる概念

「人類の集団遺伝学と進化に研究により、人種差別に化学的根拠がないという確固たる証拠が得られた。集団間の遺伝的相違は小さく、そのすべてはおそらく気候への適応とランダムな遺伝的不動(選択圧とは無関係に、偶然性の左右されて遺伝子の頻度が変化すること)の結果だということが明らかになった」(著者による引用、39ページ)

数百年におよぶ人類の拡散を、抽象的な意味において「旅」や「移住」と呼ぶことはできるだろう。しかし、祖先たちはどこかを目指していた訳でもなければ、英雄に導かれた訳でもなかった。環境の変化に押されてではあったとしても、人類という種が生き延びてきたことに、私たちは畏怖を覚え、祖先たちの発明の才と適応力に驚きを感じるが、彼らがあなたや私と同じ、普通の人間だったということを忘れてはならない。(39ページ)

蛇足

ヒト族(ホミニン)という概念で70億人の人類を定義をすると「人類とはヒト族の中で現存の種。」人類だけが人族の中で特別な存在ではないし、人類の中に特別な存在の人もいない。普通の人が普通の時間の中に愉しみ、を見いだしてきた結果がここにある。