毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

どうしてヒトの脳は大きくなったのか?~『幼児化するヒト - 「永遠のコドモ」進化論』C・ブロムホール氏(2005)

 

幼児化するヒト - 「永遠のコドモ」進化論

ブロムホール氏は動物行動学のバックグラントを持つTVディレクター、地球上で最も奇妙な進化のプロセスを続けてきた人間は幼児化してきた!(2005)

 

デズモンド・モリス氏の序文より

(本書の)テーマは、私たちがピーター・パンのような種になった―すなわち私たちが永遠の子供になったということである。これを原点として、人間の攻撃性の減退、協力姿勢の高まり、愛と結婚を基本的な配偶システムとする心理状態、そして非常に大きく、非常に奇妙な、非常に好奇心旺盛な脳といった現象が説明されていく。(7ページ)

大きな脳は性誘引物質

女性は男らしさと子供らしさの両方の特徴を備えた顔の男性に最も引かれる。そして外見を幼児的にする頭部の特徴の中でもとくに有効なのは、間違いなく半円状の大きな頭蓋である。・・・人間の大きな頭の場合、この同じように犠牲の大きい特長が、オスが幼児的で強い一雌一雄関係を形成する見込みが高いことを示唆しているのである。(191ページ)

大きな脳は知的能力とは別の存在

何十万年ものあいだ、私たちの祖先の脳はいっこうに勢いを弱めることなく成長を続けたが、この拡大し続ける性誘引物質から知的な恩恵を得ることはほとんどなかった。・・・これらの祖先が繁栄できたのは、高度な技術や知的能力があったからでなく、一雌一雄関係と男女の分業にもとづく非常に協力的で団結力のある社会組織ができていたからだった。(193ページ)

新しい脳のオペレーティングシステム

猿人を人間に変えた徹底的に新しい配線、あるいは脳のオペレーティングシステムは、脳の一部を外部の影響から自由にさせる―ある記憶から別の記憶へと無制限に移ろわせる―一方で、脳の他のい部分には外世界からの情報を分析させるという、ただそれだけのものだった。コンピュータ―のプロセッサと同様に、脳は「パーテーション」で区切られている。この脳の二つの部分が複雑に混合されて、主観、すなわち自分以外の誰も経験することのない世界意識を創り出す。(196ページ)

脳がスーパーコンピューターとなる

私たちが他の類人猿と分岐してかrた、その進化過程の99パーセントのあいだ、私たちの巨大な脳は、脳の大きさが1/3のチンパンジーとほとんど変わらない計算能力しか私たちに与えてこなかった。それがたまたま修正されて、持ち主に夢を見させると同時に意識を持たせるようになった結果、眠れる巨人だった私たちの脳はにわかに今日のような生物学的スーパーコンピューターになった。(202ページ)

幼児化するヒト

人という動物は、体毛が少なく、平坦な顔をし、大きな頭を持つ。これらの特徴を一言で言えば赤ん坊のチンパンジーの様である。動物行動学を研究した経歴を持つブロムホール氏はこれら身体的特徴は性淘汰、主に女性が男性の身体的特徴から配偶者を選ぶこと、によって加速されたと説明する。幼児的な特徴を持つ男性が安定的な関係維持の観点から配偶者に相応しいと考えるからである。

著者は大きな脳も最初は性誘引物質であり知性とは関係なかった、と分析する。この仮説が正しいかは更なる研究が必要であるが、脳の肥大にも関わらず、知性の長い停滞期の存在、物理的脳の変化ではなく脳の配線=オぺーレーティングシステムが変化することで意識が生まれた、といった他の現象を上手に説明している。

ヒトが繁栄したのは、まず集団を上手にオペレートできること、次に知性が加わった。知性が最初にあったから繁栄したのではない。幼児化するヒトという発想はこのことを明らかにしてくれる。

蛇足

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