毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

専門家の経済予測を信じてはいけない?!~『 ビジネスで使える 経済予測入門――小さな変化で大きな流れを見極める』中原圭介氏(2016)

 ビジネスで使える 経済予測入門――小さな変化で大きな流れを見極める

 中原氏は経営・金融のコンサルタント、どうして専門家の予測ほど外れるのか?(2016)

 

国際機関は予測を調整している

IMFOECD世界銀行などの国際機関の予測では、相次いで上方修正や下方修正が繰り返されています。世界経済の拡大期には、時間の経過につれて上方修正される一方で、不況期や低迷期には下方修正される傾向が強いという特徴があるといえるでしょう。・・・2016年の世界経済成長率については、2015年7月事典では3.8%としていましたが、2016年1月には3.4%へ、4月には3.2%へと引き下げ、7月にはさらに3.1%へと引き下げているのです。(84ページ)

国際機関は過去にそって予測

IMFの事例からも分かるように国際機関では、経済や市場の見通しはそのときのトレンドに沿ってなされているのが通常です。つまり、現状を後追いしながら予測していうのと変わらず、事前にはトレンドの転換点をまったく読むことが出来ないのです。国際機関にとっては予測が外れてもダメージがありませんが、それを重宝する企業にとっては、転換点が見極められないのは致命的なダメージを受ける可能性があります。(67ページ)

経済学は数百年前の物差し

経済学では「人は合理的な選択ができる」ということを前提にしています。・・・実際のところ、百貨店やスーパーに行って合理的な選択をしようとすれば、その買い物だけで一生分の時間を費やさなければなりません。・・・(経済学は)「時間の概念」をまったく無視しているという最大の欠陥は、もはや修正のしようがない。(126ページ)

経済学はプロテスタントである

経済学の祖とされるのは、『国富論』を著したイギリスの哲学者であるアダム・スミスです・・・プロテスタントカトリック(旧教)とは異なり、人間を徹底的に無力化するという宗教です。「人間は神の前では無力だ」「神に導かれるまま、人間は生きていくしかない」というのが、プロテスタントの基本的な考え方なのです。・・・(アダム・スミス国富論の)「神の見えざる手」という言葉は、たとえ各個人が利己的に行動したとしても、社会全体に利益がもたらされるような調整機能が働くということを意味しています。しかし私はさらに解釈を深めて、「神の見えざる手」という言葉には、「人間は神の前では無力だ」というプロテスタントの精神が反映されていると考えているのです。(130ページ)

経済予測入門

中原氏は企業はIMFOECDなどの経済予測に従って投資決定し失敗していると指摘する。そもそもこれら経済予測は現状追認であり、増加から減少に変わるような変化点の分析能力は低い。そもそも経済予測の前提となっている経済学のモデル自体が時代の変化に対応できていない、と指摘する。

日本のみならず欧米でも企業はIMFOECD、もしかしたらFRBや日銀、というだけでそこに正統性を見出してしまう。中原氏は他人に依存するのでなく、自動車、住宅、原油、鉄鋼、エチレンなどの需給環境、更には各国セクターの金融ポジションなどを見ることで自らが予測することを勧める。自ら考えること、これに勝る方法はない。

蛇足

自ら考える第一歩は思い込みを否定すること

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