毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

アマゾンの物流戦略を垣間見る~『物流ビジネス最前線 (光文社新書) 』齊藤実氏(2016)

物流ビジネス最前線 (光文社新書)

齊藤氏は物流論・交通論の研究家、ネット通販ビジネスが拡大し、私たちの生活に欠かせないものになった物流が企業の競争力を高める生命線となりつつある(2016)

アマゾンの新しいサービス、アマゾンフレッシュ

グロッサリーは従来、スーパーマーケットやディスカウントストアといった店舗で販売されている商品だが、アマゾンはこれらと競合する約50万アイテムにもおよぶ商品を揃え、新たなビジネスを(2013年から大都市で段階的に)開始したのである。対象エリアをあらかじめ大都市に限定し、注文を享けたその日のうちに、商品を家庭に届ける鮮度が重要な肉、魚、野菜など生鮮食料品を取り扱うので、当日配送という迅速な配送が必須となる。 注目すべきは、商品の配送をアマゾン自身が行っている点にある。これまでネット通販の配送というのは、宅配事業者に委託するのが主流だった。ところがアマゾンフレッシュは、アマゾン自ら配送用のトラックを調達し、また自社でドライバーを雇用して運転にあたらせている。(22ページ)

アマゾンがかけている配送コスト

2015年、アマゾンは配送コストとして115億ドル(1兆800億円)を支払っている。これは一企業が支払う配送料金だけだが、それ自体、巨額な金額である。この年のアマゾンの売上高は1070億ドル(12兆8400億円)であるから、売上高に占める配送コストだけで10.7%に達する。・・・これ以外にフルフィルメント・センター(配送センター)などの稼働コストもあるために、物流コストはもっと高い比率になる。(90ページ)

ドローン~無人配送

ドライバーが運転するトラックによる配送から無人の航空機による配送へと、輸送手段および輸送の仕方が変化するイノベーション(技術革新)といえる。・・・さらにもう一つ重要な点は、ドローンを導入することは、宅配便からの脱却をさらに推し進めていく契機になると考えられることだ。(42ページ)

 

f:id:kocho-3:20160727221118p:plainAmazonFresh - Wikipedia, the free encyclopedia

アマゾンの米国におけるネット通販の占有率は20%以上?

本書によれば米国のネット通販の市場規模は2015年約3400億ドル、ネット通販の比率7.3%(前年比+0.9%)に達した。2015年のアマゾンの売上が1070億ドル、そのうち日本・ヨーロッパの売上が1/3を占めると仮定しこれを除くと、米国ネット通販に占める割合は何と20%程度となる。

アマゾンは物流コストの削減に本気で取り組んでいる。配送センターで使う為にロボット開発会社を買収し、輸送用にボーイング767機を20台発注したそうである。ドローンへの取り組みも合わせて推測すると、アマゾンの物流戦略が簡単に推測できる。アマゾンは物流を垂直統合し、無人化=ロボット化したいのである。 アマゾンは様々なサービスを展開するのにあたって周到な準備をしてきた。キンドルの開発には5年以上の歳月をかけ、最後発ながらeBookとしての機能を充実させることで最大シェアを獲得した。アマゾンフレッシュを始めるに当たっては、2001年経営破たんしたウェッブ通販会社ウェッブバンの旧経営陣を採用し失敗の要因を分析したという。

アマゾンが目指すのはネット通販という情報処理と物理世界の境界線(一つは物流であり、もう一つはデータセンター)をシームレスに繋ぐこと。アマゾンの目指している世界はその時間軸とスケールで他社を圧倒している。

蛇足

ドローンが実現するのは10年後?それでも遅くはない。

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