毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

あなたのクォリティとは何ですか?~『禅とオートバイ修理技術』R・M・パーシグ氏(2008)

禅とオートバイ修理技術〈上〉 (ハヤカワ文庫NF)

 記憶障害を患った元大学教師が、オートバイで旅をした哲学紀行(原書は1974、文庫は2008)

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オートバイという観念

精密機械というものは、ある観念(アイデア)の実現を意図して、できるだけ精密に作られている。・・・こうした機器と絶えず触れ合っていると、実にすばらしい体験ができる。あらゆる点で合理的とまではいかないにせよ、私たちは、いわば魔術的とも言うべき動力に駆られて田園を走りまわることができるのである。重要なのは、この合理的で知的な観念を理解することなのだ。(188ページ)

オートバイは機能と構成部品が含まれる

「構成部品」のなかには、「動力系」と「走行系」が、さらには、、、、。そんな具合にして一つの構造が出来上がるまた「原因」といった別の作用因子によって生じる構造もたくさんあるたとえば「AはBを生み、BはCを生み、CはDを生む」といった形の長い「連鎖構造」である。

オートバイの機能に関しては、この構造を用いて説明できる。こうした構造は、だいたい非常に複雑で、しかも巨大なパターンを描きながら相互に関連しあっているので、一人の人間が一生かけても、ほんの一部しか理解することはできない。このようにいろんな構造がお互いに複雑に関連し合っているものを、総称して、システムという。オートバイもその一つ、-実在するシステムである。(191ページ)

クオリティとは何か?

「まとまり、鮮明さ、説得力、統一感、感性、透明感、力強さ、流動感、緊張感、輝き、正確さ、つり合い、深み」(下19ページ)

“クオリティ”とは、私たちに生きる世界を創造させる連続的刺激である(下259ページ)

クオリティは波のように、扇状に拡がる性向を持っているので、周囲をも変えてしまう。(271ページ)

禅とオートバイ修理技術

オートバイとは、オートバイに乗って田園を走り回り素晴らしい体験をするという観念(アイデア)である。そしてそのオートバイという観念は階層的構造を持った構成部品によって成り立ち、それは一つの機能を実現する。

クオリティとは観念(アイデア)をいかに適切に表現しているか、を示すものである。

我々は一つの観念が高次元で具体化した機能、存在に感動を覚える。これで、なぜオートバイに人は(多分男性を中心に)憧れるのか、精密なカメラや時計という物質に対し「連続的刺激」を感じるのか、説明できると思う。

オートバイとiPhone

本書タイトルの禅は精神性を、オートバイはシステムとしての統一性を、そして修理技術は現代テクノロジーを象徴している。現代人を感動させるには精神性、統一性、そしてテクノロジーを備えればいい。ここでどうしてもiPhoneを連想してしまう。一言で言うなら人は終始一貫、徹底したものが好きなのである。

蛇足

私自身のクォリティとは何か?

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