毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

宗教とは経済成長戦略の一環である~『経済を読み解くための宗教史』宇山卓栄氏(2015)

経済を読み解くための宗教史

 宇山氏は著作家、グローバル社会で成功するビジネスパーソン必須の「宗教×経済」の知識を身につける(2015)

 

 

BC4世紀、インドで統一王朝が誕生

マウルヤ朝(紀元前4世紀成立)、クシャーナ朝(1世紀成立)、グプタ朝(4世紀成立)、ヴァルダナ朝(7世紀成立)という統一王朝が興亡、これらの統一王朝は全て、仏教を国教とします。(74ページ)

経済成長戦略としての仏教

仏教は殺生を厳しく禁じています。統一王朝が成立し、安定が達成された後、動乱を封じ込めるために、殺生を禁ずる仏教の教理が利用されます。仏教は統一王朝の安定や秩序を維持する支柱となりました。また、仏教は商人層に歓迎されます。殺生のない平和な世の中で、安心して商売に打ち込める環境を商人たちは求めたのです。…都市の商人たちは仏教を連隊の絆としながら、互助的な関係を築き、統制のとれた財界の集団を作り上げ、王朝は財界を、経済の発展の原動力と見なし、これを支援することを優先しました。言わば、仏教の組織的な連隊を軸とした国家の成長戦略として、各王朝は仏教を位置づけていたのです。仏教とともに、経済発展をした統一王朝は、民衆の全てに、富が行き渡るように配慮しました。磨崖碑・石柱碑、ストゥーパと呼ばれる仏塔などを各地で建設し、公共事業を行うことで、失業者や貧困層を雇い入れ、彼らに生活の糧を与えました(76ページ)

神が経済の基盤を作る

神なる絶対者に誓い、その宗教規範を尊守することで、共通の信頼が生まれます。・・・「人を見れば泥棒と思え」という社会では経済活動を営むことはできません。「隣人を愛し、敬え」という宗教規範が優先する社会であってこそ、経済活動は成立します。(20ページ)

宗教は利害調整のための装置

「汝の隣人を愛せ」というイエス・キリストの言葉は宥和によって達成できる福利厚生の利得を説いています。その過程において、慈悲や人間愛などの倫理が語られますが、如何なる宗教でも、最終的には、厚生経済が目指す功利的な利害の調整んび、その目的が帰着するのです。(33ページ)

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紀元前4世紀から7世紀のインド統一王朝の時代

 

インド部族社会は紀元前4世紀、アレクサンドロス大王の侵攻によって、脅威に晒される。この脅威に対抗する形で生まれたのがマウルヤ朝であり、その3代目の王が仏教を保護してことで知られるアショーカ王である。以来約1100年、インドでは仏教が国教として重用された。本書ではそれを経済成長戦略の一環として整理する。

宗教は個人に精神的安定だけでなく、経済成長の基盤となる社会の安定をもたらすことになる。更に社会の成長によって発生する経済余剰の受け皿になる。一方で宗教の枠組みが行き過ぎると成長を阻害することになる。宗教とはきわめて世俗的な存在ということになる。

蛇足

 

現代インドで仏教徒は0.7%

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