心理学を如何にビジネスに活用するか?・・・・悪用禁止!!~「錯覚の科学」に学ぶ、我々はストーリーを信じる動物である
ハーバード大学の俊才たちが、最先端科学実験で次々に明らかにする、あなたの記憶のウソ、認知の歪み、理解の錯覚。科学読み物。 単行は2011年、文庫は2014年刊。
原因の錯覚
三つの片寄りは、それぞれ独立していると同時に相互にからみ合っている。これらの片寄りが生じるのは、私たちの脳が、ものごとをパターンで捉え、偶然のできごとに因果関係を読み取り、話の流れの前後に原因と結果を見ようとするためなのだ。・・・具体的に言う炉、彼らは実際には存在しないパターンがあると思い込み、偶然同時に起きたことを因果関係と取り違えるのだ。(261ページ)
原因について推理する
私たち人類は“原因について推理できる”という点で、ほかの霊長類と一線を画している。幼い子供でも、ある物がべつの物にぶつかると、二つ目のものが動くことが理解できる。そして原因について推理できる-あるものが動くのは、何かがそれを動かすからだ。ほかの霊長類はこうした推理は行わず、結果として自分たちに見えない原因を理解することは難しい。つまり進化の流れの中で、原因を推理する力は比較的新しいものなのだ。新しメカニズムは、まだ不完全なことが多い。私たちにとって、原因を推理することはたやすい-問題なのは、自分に都合のいいように原因を推理するのが、うますぎることである。
会社経営も原因の錯覚を逃れられない
ベストセラーのビジネス書によく顔をだすのが、話の流れに都合のいい要素だけを選んで、同じ結果をもたらす別の要素を無視する傾向だ。たとえばベストセラー本の「エクセレントカンパニー」から「ビジョナリーカンパニー2」に至るまでどの本も成功した会社だけをとりあげ、彼らの行動を分析するという誤りを犯している。ほかの会社が同じことをして失敗したかどうかについては、検証していないのだ。(256ページ)
相関関係と因果関係は違う
本書は心理学のアプローチで検証する。「心理学入門の授業で、基本的原則として教えられるのが、二つのものの相関関係は因果関係とは違うということだ。」(247ページ)相関関係か、因果関係かは対象実験あるいは再現性で確認ができる。我々はそれを知りながらやっぱり錯覚に陥る。
人類の生物として特性故に、因果関係で理解すると安心する。それは生存と進化の上でプラスだった。だから今もその特性がある。
心理学でビジネス書を分析
心理学のアプローチから分析すればビジネス書は対象実験、あるいは再現性に欠けるという指摘は正しい。心理学のアプローチではビジネス書は一つの因果関係の仮説、あるいは相関関係に過ぎない。
一方でビジネス上では因果関係の仮説、あるいは相関関係であっても有用な情報になり得る。そもそもビジネスの目的は心理学的正しさの追求ではない。逆に本書はビジネスに役立つ理論が様々埋め込まれている。世の中には「麗しき誤解」という言葉もあるのだから、、、。(文春サイエンス&ビジネス2弾と銘打っていた、本書はビジネス書だったと気付く)
蛇足
人は信頼できる人からストーリーで語られると信じる。
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