毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

世界にわずか40名、選ばれし深海船パイロットから学ぶ~人間にしか出来ない事

しんかい6500は、深度6,500mまで潜ることができる世界でも7隻しかない有人潜水調査船。

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「しんかい6500」<研究船・探査機<研究船・施設・設備<JAMSTECについて<独立行政法人海洋研究開発機構

 

深海のパイロット (光文社新書) 

「日本でおよそ20人、全世界でも40人前後しかいない深海潜水調査船のパイロット。日々、深海を旅する彼らは、そこで何を見、何を考え、何を体験しているのか?」 

将来は有人潜水船か無人潜水船か、どっちだ?

技術が進んで、宇宙空間や人がいけないところへもバーチャルとして出かけることができる。これらの技術がそなわった現在、まだ有人の潜行調査が必要であるか?

 
藤岡氏は潜行回数が日本一の地質学者、第二章で有人の意義を説く

①人の目の良さ

人の目は空間的にものを見る様にできており、これが脳に直結していて、診断を迅速に行うことができる。ロボットがかなり発達し、かなりの仕事ができるようになってきたが、そうであっても人間の目にかなわない。現在の技術では人間の目を作ることはできない。

②知的好奇心

どうしても自分でそこに行って自分の目で確かめてみたいという、人間の飽くなき「知的好奇心」をあげることができるであろう。(中略)そういう意味では「そこに海があるから」であると応えざるをえない。

臨場感という訳のわからないもの

大相撲の中継を茶の間で寝そべって見ていても、どちらの力士がどんな具合に勝ったかはわかる。しかし土俵下の砂かぶりで、大歓声を聞きながら熱気に巻き込まれて感じる臨場感は得られない。

人間の勘

深海底での限られた時間の中で、わずかなデータを基にどっちにいけば目的のものを発見されるかは勘によるものと言ってもよいであろう。(294296ページより再構成)

 

パイロット経験者、井田氏の言葉を引用

「要するに人間を越えられるセンサーはあり得ないと思うんですよ。人間はセンサーでありCPUを持ち、いろんなアクションのできるセンサーもある訳でしょう。何にも知識も能力もない人間を海底に持っていったって、何の意味もない訳ですよ。今ある無人機というのは、先に人間がやっていた部分がどんどん、それに置き換わってきてはいるけれども、それより先にいく事なんてあり得ない。その代わり、その場に行く人間に対する要求も、どんどん高度なものになっていきますよね。(中略)何で機械で済むようなところへ俺が行かなきゃいけないのだよ、という人間がどんどん先に行くんじゃないかと思いますよ。そういう意味で、有人ですよ。」

情報を統合して認識する事は人間の特権

コンピュータに人間が見た経験のあるものをパターン化して画像処理させる事はできる。見た事の無いものを画像処理によって発見する事はできない。無人潜水船をロボットと捉えれば、有人か無人かの問いは有人が必要であるという結論になろう。それでは深海に未だ人間の認識していない探索の対象があるか?言い刈れば知的好奇心の対象はあるか?なければ無人潜水船で十分という結論になる。

蛇足

一番必要なもの、知りたい、やってみたいという動機