毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

殺虫剤と脳発達障害、そしてミツバチ

殺虫剤2種、脳発達を阻害する可能性 EU報告 (AFP=時事) - Yahoo!ニュース

欧州連合(EU)は17日、広く使用されている2種類の殺虫剤が脳の発達を阻害し、人間の健康に危険を及ぼす恐れがあるとの警告を発した。うち1種については、壊滅的なミツバチの個体数減少に関連しているとみられている。

ハチはなぜ大量死したのか (文春文庫)

ジェイコブセンは食物、環境などのジャーナリスト。本書は2006年から2007年のミツバチの大量死、蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder)、CCDに関する本。作者によれば「2007年の春までに、実に北半球のミツバチの四分の一が失踪したのである。」

ミツバチとは

昆虫は1億5000年前にわたって、花をつける植物の生殖を手伝う待女として働いてきた。今では地球上の大部分の植物が生殖を昆虫に頼っている。

タンパク質が豊富な花粉も良質の健康食品だが、決め手は花密。ほとんどの花に備わる小さな井戸に蓄えられたエネルギー豊かな砂糖水だ。(中略)花密と花粉を食料にしている昆虫はおびただしい数におよぶが、8000年前、その一群であるハチが、これを特殊技能として発展させた。ハチ自体、その種類は2万種にもなるものの、花蜜採取の技を真に極め、人間がその技量を利用して文化を気づくに至った蜂は、(セイヨウミツバチの)たった一種類である。」(22ページ)

世界の食料生産に不可欠な昆虫による花の受粉のうち80%はハチが行っており、ハチがいなくなると、多くの作物は結実が不可能になったり、人工授粉が必要になってくる。

CCDの複合要因は?

北米のミツバチはシステム化された産業に組み込まれている。そこでは花の開花=受粉時期に併せ北米をトラックで巣ごと移動、農作物に撒かれた様々 な農薬、ウィルス、ダニ、など牧歌的な養蜜とはかけ離れている複合要因がCCDの原因。2月にはカリフォルニアのアーモンド、3月はリンゴ、 4月は再びカリフォルニアのひまわりとキャリノーラ、市場規模は蜂蜜そのものの売上より受粉作業代の方が市場規模が大きいそうである。

CCDとの関連を強く示唆されるネオニコチノイド系農薬

ネオニコチノイド系農薬は、植物が葉を食べられなうようにするために大昔から(植物)体内で作り出してきた天然の農薬であるニコチンを模したものだ。もちろんニコチンの王者はタバコ だが、トマトやジャガイモやピーマンにも微量のニコチンを生成している。ネオニコチノイド系農薬は神経を麻痺させる毒薬で、アセチルコリン(神経伝達物質)と結合すべき受容体に結合する。(ミツバチの体内の)受容体が、アセチルコリンではなくネオニコチノイドっと結合すると、文字通り信号が交錯してしまう。方向k感覚の喪失、短期記憶喪失、食欲の減退、そして最後には死を招く。(136ページを再構成)

著者によればネオニコチノイド系農薬は人体に入っても48時間には体内から排出、そして浸透性農薬と言って種子に処理をすれば植物全体に行き渡るという散布が容易という特徴を持ち、使用量が拡大してきた。

ミツバチに与えられた矛盾に満ちた役割

ミツバチは主に節足動物、昆虫、を排除する農薬で処理された作物の中で受粉を行うという極めて過酷な矛盾に満ちた作業を押しつけられている。

社会性を持つ昆虫としてミツバチは人間社会の比喩によく例えられるが故に、CCDから人間の比喩を想像する事は危機感を煽る事になる。

それを承知であえて何かを学ぶとすれば、社会は善意で矛盾に満ちた環境を生み出してしまう事がある、そして我々はこの矛盾を認識し変化させる事ができると確信する事、と考える。

蛇足

ミツバチを飼ってみたくなった。