毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

イギリス帝国の歴史と日本のIPO

イギリス帝国の歴史 (中公新書)

 秋田氏は大阪大学の世界史の研究家、序説「現代アジアの経済的再興とイギリス帝国」の中で以下の様に述べている。(本書の副題が「アジアから考える」である所以でもあります。)

 2010年に中国のGDPが日本を超えて、アメリカに次ぐ世界第二位になった点が極端に強調されるが、世界全体で見れば、東アジア地域のGDPが世界のほぼ三分の一を占め、アメリカ太平洋岸を含めた「アジア太平洋経済顕」のGDPが世界の過半を超えた事実は、さほど注目されていない。(6ページ)

今から約100年まえ、1900年前後の日英関係をまとめました。

1894年 日本は日清戦争の賠償金3800万ポンドの金塊を英イングランド銀行に預託

1898年 日本は英ヴィッカース社に戦艦(後の三笠、日露戦争のエース)を発注

1902年 日英同盟締結 英の「栄光ある孤立」政策の転換

1904年 日露戦争の開始、日銀副総裁の高橋是清が英シティで外債発行に着手

 神田氏によれば「1900-1913において、外債発行を通じた日本の大規模な資本輸入は、ロンドンにおける外債発行額の約2割を占めていた。」(179ページ)

 20世紀の初頭はイギリスは工業製品の国際競争力がドイツ・米国の成長により相対的に低下し「世界の工場」から配当・利息による貿易外収入による「世界の金融」にシフトする時期であった。

 その時の日本は新興工業国であり、近代軍備による植民地拡張政策を続ける国、つまりは「旺盛な資金需要のある新興成長企業がIPO(上場)した」様なものであったと思う。

本書ではインドについても多くのページがさかれており記述は簡素ではあるが、少ない記述だからこそ全体把握ができた。