地方公共団体とは何か?~『 君は憲法第8章を読んだか』大前研一氏(2016)
第8章は「地方自治」を謳いながら、結局は中央政府がすべての権限を握り、中央の意向に従う者だけに目こぼしする歪な政治の論拠となっている。(2016)
地方公共団体とは?
日本という国をより良くするための憲法改正を目指すなら、まず私は国民一人一人のい、地方の権限や責任を規定している第8章を読んでもらいたいと思う。・・・我々が日ごろ「地方自治体」と呼んでいるものは、ここでは「地方公共団体」としか呼ばれていない。つまり、都道府県や市町村は「地方自治体」(自治の機能を持つ団体)ではなく、「地方公共団体」(地方における行政サービスを行うことを国から認められた団体)でしかないのである。(75ページ)
(GHQは)軍事独裁と全体主義の恐ろしさは理解していたが、江戸時代から連綿と続いて日本の隅々まで根付いた中央集権体制という統治機構を持つ危険性までは理解が及ばなかったのである。・・・帝政たる天皇制は共和制たる連邦制と相いれない、という問題が起きる。この中央集権の象徴としての天皇というものを最初に置いてしまったがゆえに、進駐軍は共和制、アメリカ型の連邦制が導入できなかった。・・・日本に政府は一つだけであり、統治機構に関して「地方政府」という概念は存在しないわけだ。(107ページ)
第九十二条
地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
憲法草案
私自身は根本的に現行の日本国憲法は「改憲」でなく、ゼロベースで「創憲「」すべきだと考えている。・・・私が言うところの「創憲」は、単に現行憲法の条文を”誤文訂正”したような自民党の「憲法改正草案」や、現行憲法に環境権などの項目を付け足した公明党の「加憲」とは全く違う。・・・日本人は今こそ自分たちの手でゼロから自主憲法を創り上げるべきなのだ。(168ページ)
君は憲法第8章を読んだか
大前氏は憲法第8章を「江戸時代以来、日本の染色体に一番深く入り込んでいる中央集権という統治機構を延命させている」(222ページ)という。大前氏の主張である地方分権、道州制の世界的な潮流を考えれば憲法第8章はそぐわない。
第8章には地方公共団体という言葉はあるが地方自治体という言葉は見当たらない。地方公共団体は行政サービスを行うのであって、自ら政策を選択する自治体、あるいは地方政府という言葉は見当たらない。地方分権が進まぬ大きな構造であろう。
大前氏はまずはどういう憲法がいいのか、考えてみることを薦める。憲法が国と国民の根本的関係を規定するものであれば、それぞれが理想とする憲法があってしかるべきである。憲法第8章は憲法が我々の生活を根底の所で規定していることに気づかせてくれる。ならば憲法の文言はもっと議論の対象になっていい。
蛇足
本書によればアメリカは戦後憲法を6回修正、ドイツは59回!修正した
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