毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

我々はどこまで古い天災を記録しているか?~『天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災』磯田 道史 氏(2014)

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

磯田氏は日本史の研究家、富士山の火山灰はどれほど降るのか、波から助かるための鉄則とは。 東日本大震災後に津波常襲地に移住した著者が伝える、災害から命を守る先人の知恵。(2014)

 

 

南海トラフ

現在はっきり被害が想定されているもので、日本最大の危機はこの南海トラフの連動地震である。政府の中央防災会議による被害想定も出揃ってきた。被害を「最大」で想定した場合、人的には32万人程度が犠牲となり、経済的には220兆円を超える被害がでるとされている。ただし、この数字は、東日本大震災の時と違い、すべての原発地震からの連鎖反応が防げるという甘い前提で計算されたものである。・・・歴史的にみると、南海トラフの巨大地震には超巨大地震と巨大地震がある。(77ページ)

超巨大地震津波

1000年に一度か500年に一度くる「異例な巨大津波」というのがある。・・・最後にきたのは1498年(明応7年)。波高が静岡県平野部で10~15メートルとなる。

どのくらいの大きさの津波が来るか?

我々はこの歴史的経験から、これら襲ってくる津波の高さの確率分布も考えておくべきであろう。我々は約500年間に5回の南海トラフ津波を経験した、このうち、①平野部で十数mの高さの津波が1回(明応津波)、②同じく5メートル以上の津波が3回(慶長、宝永・安政津波)、③同じく5メートル未満の津波が1回(昭和南海津波)である。このことからすれば、十数メートルの津波が20%、十数メートルには達しないが5メートル以上の津波が60%、5メートル以未満の津波が20%という確率分布でやってくる、といったふうな覚悟は必要なようだ。十数メートルに達する津波は防波堤などの土木構造物を持ってしても対策が難しい。(83ページ)

仙台平野の場合は?

仙台平野は約2000年前、約1100年前(貞観津波)、400年前(慶長三陸津波)、そして2011年(東日本大震災津波)と、はっきりしているだけで、2000年間に4回もの大津波に襲われている。いずれも内陸4キロ前後まで浸水。500年前後の周期性をもったきわめて反復性の高い自然現象であったことがわかる。(192ページ)

富士山噴火の場には?

富士山が宝永(1707年)のような噴火活動にいたった場合、東京では、気味悪い振動を4日間、火山灰の降下を12日間は覚悟せねばならぬ、ということであろう。(57ページ)

 
日本の防災史

 

 

日本は地震震源の上に存在する。極端に言えばどこにも逃げ場は無いと言ってもいい。日本人はそれを知りながら日本に住んできた。そして天災を記録に留めてきた。仙台平野は500年周期で地震に襲われる。それは残念ながら2011年に証明された。南海トラフは超巨大津波を引き起こす。富士山も噴火する。我々は当分の間それらがいつ起きるか、知ることはできない。しかし、天災は必ずやってくる。天災への備えは専門家・行政によって行われる。我々にとって必要なのは、500年単位で思考できる能力である。

蛇足

 

津波に対する対策は避難場所を家族で共有しておくこと

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