100年前のインド独立運動にみる「ガンジーのディベートに負けない技術」~恐怖心の制御
イギリス支配のもとでの近代文明を批判、真の文明とは何か、インドの真の独立のあるべき姿を論ずる。本書は1909年、20年ぶりにインドに帰国をする船上で執筆された。
ガンジーの主張
「私たちはイギリス統治を必要とするが、イギリス人は必要としない。」を否定する。(29ページ)
もしインドがイギリス国民の模倣をしたらインドは破滅してしまうと私は特に考えています。・・・イギリス人たちの-いやヨーロッパの-近代文明の欠陥です。その文明は非文明です。それでヨーロッパの国民は破滅しようとしているのです。(36ページ)
イギリス人の最高神はお金である、このことに留意するとすべてがはっきりとします。・・・イギリス人たちは商売のためにやって来たし、商売の為にいて、いさせておくのはまさに私たちである、・・・イギリス人たちの武器はまったく役立っていません。(47ページ)
文明とは、人間が自分の義務を果たす行動様式です。義務を果たすことは道徳を守ることです。道徳を守ることは、私たちの心と感覚器官を統制することです。(81ページ)
インドの国益を願う人たちは、子供が母親にしがみつくように、インド文明にしがみついていなければなりません。(85ページ)
イギリス人を連れて来たのは私たち。イギリス人たちがここにいるのは私たちのせい。私たちがイギリスの文明を受け入れたので、イギリス人はここにいられるのです。
インド文明は至高で、西洋文明は3日間の見世物である、とよく理解して信じる人こそが真に(インドの独立に)陶酔している人です。(145ページ)
「日本のように、インドを自国の艦隊、自国の軍隊、自国の繁栄、そのときに、インドは全世界に名を挙げるでしょう。」事を否定している。(29ページ)
日本でイギリスの旗がはためいていると思ってください。イギリス人は日本と同盟を結びましたが、それは自分の商売のためです。日本でイギリス人たちは大いに商売しますよ。(47ページ)
ローマは滅亡してしまい、ギリシャは名ばかりのものとなり、ファラオの帝国は滅び、日本は西洋の爪に捉えられてしまいました。中国については何もいえません。(80ページ)
ロシアをあなた(イギリス)は畏れているかもしれませんが、私たちは恐れていません・ロシアがやって来たら私たちが相手となりましょう。(143ページ)
インドのルピー札にはガンジーの肖像:ガンジーは資本主義を否定的に見ていたが、お札に載っているのも皮肉。
ガンジーは「恐怖に打ち勝つ方法」を示した
突き詰めるとガンジーはインド独立の機運が高まる人々にまったく違った視点を提供している事に気づく。ガンジーはイギリスの資本主義を否定し、軍事力は資本主義の道具と看做し、西洋文明を3日間と言い、「相手に勝てるロジック」を示した。そしてこのロジックは「私たちの心と感覚器官を統制すること」により、イギリスの既存秩序に対抗する為には精神的かつ肉体的恐怖を克服する方法でもある。ガンジーは弁護士出身、インド独立に当たり、相手にロジックで勝て、恐怖を制御する方法を打ち勝ちを打ち立てた。
100年前と今からわかる事
本書の執筆は1910年、ヨーロッパは二度の大戦を経験した。その意味でガンジーが指摘をした西洋文明の欠陥は正しかったと実感する。同時に100年前日本は政治制度、経済体制として既に近代西洋に組み込まれていた事、そしてその関係は今も変わっていない事に気づく。100年間の時間がガンジーの言葉にリアリティを与えている。
蛇足
議論で負けない為に、恐怖心を制御する。