世界は統合と分散のサイクルを繰り返す! 今はどの方向か?
現代帝国論―人類史の中のグローバリゼーション (NHKブックス)
山下氏は世界システム論の研究家。本書では現代を①植民地獲得競争という形でグローバリゼーションが推進された前半と②IMF+GATTといったWTOの管理体制の制度化の後半という「長い二十世紀」の最後の段階と位置づける。これを人類の歴史の中で①グローバルな普遍主義と②放任された多様性の出現する社会、の狭間での転換期であるという前提を持つ。
帝国とは
帝国とはその世界の複数性の管理を安定化(固定化)しようとする力、複数の世界がせみぎあうネガティブな自然ーつまりポランニー的不安ーを管理する仕掛けでもある。(107ページから再構成)
ポランニー的不安
カール・ポランニーは労働・土地・貨幣の市場化の限界を説く。限界の発生により市場経済化は停滞=「大転換」を生じると考え、それは各々の要素の定義が流動化する事で発生する。ミクロ的には人間が労働力として商品化されている事に対する不安、マクロ的にはあらゆる秩序の前提となる規範が無い状態=世界の底が抜ける、状態。(20-23ページから再構成)
次の普遍性はどういう形で現れるか?
筆者は3つに分類し、戦争の位置づけで説明する。
①ネオ・ホッブス的単一でポジティブな普遍性:一つの理念の下戦争は肯定される。
②外的な普遍主義は存在しないというネガティブな普遍主義:戦争に対し一元的なスタンスは存在しない。
③普遍主義は常に変化しつづけるタ普遍主義:戦争という定義そのものが変化し続ける。
著者は③の立場をとりつつ、「普遍性の存在を肯定しつつ、世界の底はたえず張り替えつつあり、『グローバルに考え、ローカルに行動せよ』」(264ページ)と書き本書を終えている。
蛇足
古代ギリシャの時代からグローバルな統合の流れとその分散は繰り返されてきた。