毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

世界の肥満体質の人、19億人

肥満と太りすぎの人口は19億人、ざっくり3人に1人が肥満体質と言えよう。

 日本農業への正しい絶望法 (新潮新書)

神門氏は日本農業の研究者。現在の日本の農業をマニュアル依存型小規模農業と捕え、技能集約型農業へのシフトが日本農業に必要な事と説く。現在農業に対してマニュアル依存型大規模農業を企業により行う事が喧伝されるが北米・豪州の大規模農業に対して競争力を持ちえず、技能集約型農業により支えていくべきだと考える。技能集約型農業の担い手は農業に精通して臨機応変に対応できる「板前が握る寿司屋」の例え(78ページ)を使って説明する。

本書での気づきは別の所にあって実は日本だけでなく欧米でも「農業の付加価値率が低い」と考えるのではなく、「需要と供給のバランスが崩れており価格の下方シフトを人為的に回避している」と認識する方が実態に正確であると考える。

 

OECDの推計によると日本の農業保護額は4.6兆円で日本農業の付加価値額の3.0兆円を上回っている。計算上は農業生産をゼロにした方が国民所得は増えるという異常事態だ。(19ページ)

・伝統的に先進国では農業者の政治力が強い。米国でも欧州も多額の農業補助金によって農業者の所得を守ってきた。この補助金が穀物の増産を招き、90年代には欧米とも深刻な穀物の過剰在庫を抱え込んだ。(中略)90年代、欧米は多大な農業補助金の注入によって食糧自給率を高めたが、それは同時に途上国の穀物生産を犠牲にする行為でもあった。(183ページ)

・肥満人口が飢餓人口を上回っているという事実が端的に示すように、世界全体では食糧の絶対量は足りている。しかし、先進国の圧倒的な経済力の前に、途上国はあっけなく”買い負け”してしまう。(中略) (世界の飢餓人口が2008年以降1億人程度急増したのは)同年のリーマンショックによる世界不況で、途上国の貧困層の収入が減ったためだ。飢餓が食糧の絶対量の問題ではなく、経済力の問題だということを端的に示している。(187ページ)

 

WTOの2008年の公表資料から確認。 総人口67億人

肥満:5億人+太りすぎ:14億人=19億人(人口構成比28.4%)

飢餓人口アジア:5.7億人+アフリカ3.0億人+南米等0.5億人=9.25億人(人口構成比13.8%)

この数字を見ると臨場感を持って「飢餓の克服」を認識できる。すべては配分の問題であると直視すべきである。

 

蛇足:中国の2000年前の言葉、苛政猛虎(かせいもうこ)を思い出す。

出典は礼記「苛政猛二於虎一也」(中国周~漢の時代)