毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

どうして料理上手が喜ばれるか?~料理上手をエネルギー効率で考える、書評「火の賜物」

 火の賜物―ヒトは料理で進化した

ランガム氏は生物人類学の研究家。「人は料理で進化した」、2010年刊 

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実は料理はカロリーに影響を与えない

 

 

摂取エネルギーに対する料理の効果は、牛肉、豚肉、鶏肉、ビートの根、じゃがいも、米、カラスムギ、ペストリー生地、その他何十という食物についてすべて同じーすなわち平均ゼロだった。・・・料理は水分の内容を変え、ビタミン濃度を下げるが、カロリー密度にくいては生だろうが、焼いたり炙ったり煮たりしようが変わらないという。(59ページ)

 

料理とは消化プロセスを外部化する技術

 

 

加熱することによって澱粉がゲル化し、タンパク質が変質して、あらゆるものが柔らかくなることだ。こういったプロセスを経て、料理は私たちが食物から得るエネルギーの量を実質的に増やしてくれる。(59ページ)

 

澱粉は加熱によって消化吸収され安くなる

 

 

澱粉はパン、ケーキ、パスタなどふだんから口にする食物の主成分である。世界中のほとんどすべての植物性主食は。澱粉質の食物だ。・・・加熱された澱粉の少なくとも95%が小腸最終部までに、消化吸収される。・・・同じ計測で加熱していない澱粉の消化率ははるかに低い。小麦の澱粉の場合は71%、じゃがいもは51%、バナナ類の生の澱粉はわずか48%である。(61ページ)

 

澱粉のゲル化

 

 

料理によって消化率が上がるのは、おもに食物のゲル化が進むからだ。植物の細胞内の澱粉はグラニュールと呼ばれる高密度のブドウ糖の小粒子の形をとっている。・・・水分がるところで温められると・・・グラニュールはばらばらになり、ブドウ糖の鎖は保護を失ってゲル化する。・・・ゲル化は澱粉が料理されたときに生じる。水分が存在するかぎり澱粉は温めれば温めるほどゲル化する。そしてゲル化が進むほど酵素が働きやすくなり、完全に消化され安くなる。(62ページ)

 

料理のエネルギー論

 

我々は料理によって消化プロセスを外部化している。料理とは、体外で消化の前処理プロセスを行うことである。著者によればチンパンジーは一日に6時間咀嚼してそれだけで1800カロリー消費している。ヒトは一日に1時間しか咀嚼せず、平均2000-2500カロリーを得ている。

食糧のエネルギー論

 

更に言えば火という外部エネルギーを使って吸収効率を上げている。火が消費したエネルギーが消化吸収によって向上したエネルギー摂取量を下回って居なければ長期的には成立しない。人類が繁栄を続けてきたという事はこれが長期に渡って成立していた。料理によって私たちの祖先の歯や顎、消化器官が小さくなり、脳が大きくなるという成功を収めた。

古今東西、結婚相手に料理上手な事が尊ばれてきた理由が判った。料理上手の意味はエネルギー効率よくカロリー吸収効率の良い食料を提供する事である。外食が溢れる溢れる時代、料理上手の意義はカロリーコントロールなのかもしれない。

蛇足

過剰カロリー摂取のメカニズムを料理に活かす!

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