毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

実質為替レート指数という言葉を知っていますか?~『戦後経済史』野口 悠紀雄氏(2015)

戦後経済史

野口氏はファイナンス理論の研究家、戦後70年をリアルタイムで生きた経済学者の集大成。(2015)

日本の経済のピークは90年代半ば

 

名目為替レートではなく、各国の物価上昇率の差を調整した実質為替レート指数をみると、円は90年代中頃に140前後のピークをつけ、それ以降は傾向的に低下しています。つまり90年代半ばを境に、それまでの長期的な円高傾向が逆に円安傾向に変わったのです。

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 実質為替レートはドル円だけでなく、貿易に使用された通貨すべてを換算している。日本円は他国の通貨全体に対し、90年代半ば以降円安傾向を続けている。

実質為替レート指数

 

実効為替レートは、特定の2通貨間の為替レートをみているだけでは捉えられない、相対的な通貨の実力を測るための総合的な指標です。具体的には、対象となる全ての通貨と日本円との間の2通貨間為替レートを、貿易額等で計った相対的な重要度でウエイト付けして集計・算出します。「実効為替レート(名目・実質)」の解説 :日本銀行 Bank of Japan

 

知的活動も90年代がピーク

先日日本の出版統計を調べていたところ、書籍の販売金額も96年がピークだったことを知って、ショックを受けました。現在の販売額は、96年の2/3程度でしかありません。普通言う意味の経済活動だけでなく、知的活動・文化活動でも90年代中頃がピークだったのです。

いや、「でも」という表現は適切ではありません。「2/3に縮小してしまった」というのは、GDPなどに観られる経済活動規模より激しい縮小率です。この意味を、われわれは真剣に考える必要があるでしょう。(292ページ)

必死に働いているか?

私はどの国民の能力にも、大きな差はないと思います。違いがあるとすれば、制度や組織が、「働きたい」という人々の要求に応えられるものになっているかどうかです。

 終戦直後の焦土から10年足らずで、日本は復興を果たしました。ただし、それは、日本人が必死になって働いたからこそ実現できたものです。

私は、戦後70年目が、日本人の基本的なものの考え方を転換する事典になることを願っています。(324ページ)

戦後経済史

 

日本の通貨は90年代半ば以降円安傾向にある。法人統計における売上高営業利益率、勤労統計調査における賃金指数(現金給与総額)についても90年代半ばを境に低下傾向にある。更に驚くべきことに、出版業界は2/3に縮小した。

これらに言い訳するのは簡単である。「ITで価格破壊が進んだだけであり、心の豊かさはむしろ増えている。」などと考えがちである。

実質為替レートは90年代以降円安傾向にある。1980年代と同じ水準である。日本は経済のピークを過ぎ、35年前と同じ所に戻ってきてしまった。

大人には、自らが働くのは当然として、皆が喜んで働ける舞台を用意することが求められている。先進国と言われる国に住む人はみなこの覚悟が必要である。

蛇足

 

日本経済のピークは1990年代半ば、という事実を受け入れよう。

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