毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

生命にとってのウィルスの意味

フレッド・ホイル

Sir Fred Hoyle,1915-2001)は英国出身の天文学者、SF小説作家。元素合成の理論の発展に大きな貢献をした。現在の天文学の主流に反する数々の理論を提唱したことで知られる。(Wiki)

 ホイル氏のアカデミックな分野での業績

①定常宇宙論を主張し、ビック・バンという言葉を作って膨張宇宙論を否定した。(ビッグバン仮説が有力)

②恒星内部ではヘリウム原子核3個から炭素を生成するトリプルアルファ反応と呼ばれる核反応により炭素が形成されるという仮説を提唱。(その後実証された。)

③生命は宇宙で進化し、胚種 (panspermia) によって宇宙全体に広がったというパンスペルミア仮説(胚種広布説)を唱えた。地球上での生命の進化は彗星によってウィルスが絶えず流入することによって起こると主張。(主流の意見とは思われない。)

パンスペルミア仮説(胚種広布説)

フレッド・ホイル氏(茂木健一郎氏監修)は「生命は宇宙を流れる。」(1988年原書出版)で以下の様に説明する。

地球の生命のもとは、宇宙のどこかで生まれ、地球に送り込まれてきたと考えればよいのだ。そこでわれわれが思い出すのが、彗星に含まれる数々の有機分子や乾燥させたバクテリアとそっくりの性質を示すダストだ。そう。彗星が地球の生命を運んできたのだ。(54ページ)

本書監修の茂木氏はホイル氏の主張を以下の様に要約する。(219ページ)

①生命は宇宙の中を広く流通している。

②生命は、宇宙空間を含めた、幅広い環境の中で存在できる。

③進化においては、個体や種の壁を超えた遺伝子のやり取りが、重要な役割をはたしている。

「生命を秩序を維持する為の情報」とイメージすると上記①~③はリアルに理解できる。(生命を人間の様にイメージすると①~②は受容できないであろう。)③について茂木氏は「DNAやRNAの塩基の配列が、どのアミノ酸に対応するかというコドン」がほとんどの生物で共通であり、「遺伝子は生物界で広く通用する通貨」である、と説明する。本書がホイル氏により執筆されたのは25年前、現在の天文学における観測能力の向上はホイル氏の意見を支持するものだと考える。

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アルマ望遠鏡のウェブから転載

http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/aboutalma/outline/06.html

ウィルスとは何か?

ウィルスをこの文脈で抽象的に捉えれば、遺伝情報を持ち、化学物質のように容易に結晶化でき環境耐性を持つ存在となる。ウィルスが生命の素となる情報を運ぶ「ビークル」とイメージすると整合性が取れる。