毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ビジネスに生産性やモチベーション向上の概念が導入されたのはいつ頃だったのか~『経営戦略全史』 三谷宏治氏

<経営戦略全史 (ディスカヴァー・レボリューションズ)

三谷氏は経営戦略のコンサルタントの出身、経営戦略100年の発展史を一気読み! 2013年刊

 

テイラーの科学的管理法(1911)

 

 

毎日400-600人の作業者がショベルを使って鉱石や灰をすくっては運ぶ仕事をしていました。日によってすくう物の重さも形も様々なのに、作業者は好きな大さ・犂きな形のショベルを絵欄で仕事をしていました。・・・(テイラーは実験を繰り返す事により)ショベル1杯あたり何ポンドがいいかを突き止めました。その値はずばり1杯あたり21ポンド(9.5kg)でした。・・・ショベルを差し込む速さや高さ、投げる時間まで最適化され、賃金体系も、ある作業量を超えたら賃率が上がる段階制にしました。(33ページ)

 

f:id:kocho-3:20150119073722p:plain33ー34ページ

米国の工業生産性向上の原動力

 

 

産業が拡大し、若い未熟錬工が大量に働くようになったこの時代、人々は公正な条件の下で、より高い賃金を求めていました。一方経営者たちは生産量の拡大を急ぎ、その効率化を求めていました。テイラーの科学的管理法はこういった時代にまことにあった管理法でした。(35ページ)

 

テイラーの意義

 

テイラーは製造業の現場をマニュアル化・標準化した事で熟練工が不要になった。その結果熟練工の確保という供給サイドの制約から企業を解放する事になった。資本を投下して工場を増設し、若い未経験者を雇用する事で工業製品製造が可能になったのである。

テイラーの第2フェーズ:非テイラー的結果の出現

 

ハーバード・ビジネス・スクールに招聘されたメイヨーは、労働環境と生産性がリンクしない非テイラー的結果を検討する事になった。1927年電話機製造会社ウェスタン・エレクロリック社を調査する。

 

工場全体2万人以上が面接対象となりました。最初は研究者による面接を決めての聞き取りでしたが、途中から現場マネージャーが面接を行うようになり、面接法も自由に会話する非誘導的なものになりました。要は雑談です。・・・面接をしただけで(内容にかかわらず)生産性が向上したのです。・・・メイヨーは結論しました。ヒトはパンのみによって生くるにあらず、と。企業での生産性向上というテーマは、まことに複雑で深遠なものとなりました。コストや効率だけでなく、ヒトの感情までをも扱わなくてはならなくなったからです。(46ページ)

 

経営戦略はアメリカで始まった

 

テイラーの科学的管理からメイヨーの調査まで約20年、企業の取り巻く環境は大きく替わり人は経済的存在から社会的存在に変化した。それだけ社会が豊かになったとも言える。どうやったら生産性が上がるか、どうやったら人間のモチベーションが上がるか、この二つが組み合わさり、そしてそれを向上させようとした時、近代的な経営戦略が始まった。そしてその経営戦略は外部環境に大きく影響を受け、一つの正解が存在しない事もまた明らかになる。

蛇足

 

生産性とモチベーション、今も同じ議論が繰り返されている

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