毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

神話が伝えること、危機に直面することが生きること~『神話の力』J・キャンベル×B・モイヤー(2010)

 神話の力

 神話はなんのために生まれ、私たちに何を語ろうというのか?(原書は1988、文庫は2010)

シャーマン・イグジュガルジュク

彼はカナダ北部のカリブーエスキモーのシャーマンでね。ヨーロッパからの訪問者に対してこう言ったものだ―『唯一の正しい知恵は人類から遠く離れたところ、はるか遠くのおおなる孤独のなかに住んでおり、人は苦しみを通じてのみそこに到達することができる。貧困と苦しみだけが、他者には隠されているすべてのものを開いて、人の心に見せてくれるのだ』(22ページ)

シャーマンは、男であれ女であれ、少年期の終わりか青年期の初めに圧倒的な心理体験をしており、そのおかげで完全に内面に向いている人です。一種の精神分裂的な衝撃です。無意識のすべてがパックリと口を開き、シャーマンはそこに落ち込む。(195ページ)

人生の目的とは

人間がほんとうに求めているのは<いま生きているという経験>だと私は思います。純粋に物理的な次元における生命経験が自己の最も内面的な存在ないし実体に共鳴をもたらすことによって、生きる無上の喜びを実感する。それを求めているのです。(43ページ)

イグジュガルジュクの世界観~探検家の日々本本より

若い頃にシャーマンの素質を見出された彼は、部族の仲間から強制的に冬の荒野に放り出され、30日間にわたる過酷な断食修行を強いられた。その後も断続的に修行を課せられ、自然の奥に宿る生と死の秘密、この世の中を動かしている絶対的な原理を射貫く透徹したものの見方、すなわち唯一の正しい知恵を獲得することになった。(120ページ角幡唯介氏)

英雄は旅にでる

英雄とは、自分自身より大きな何物かに自分の命を捧げた人間です。(265ページ)

神話は、もしかすると自分が完全な人間になれるかもしれない、という可能性を人に気付かせてくれるんです。(314ページ)

神話は、何があなたを幸福にするかは語ってくれません。しかし、あなたが自分の幸福を追求したときにどんなことが起こるか、どんな障害にぶつかるか、は語ります。(330ページ)

苦しまないでも生きていける、と言っている神話には、一度も出会ったことがありませんね。神話は私たちに、苦しみとどう立ち向かい、どう耐えるか、また苦しみをどのようの考えるかと語ります。(341ページ)

大きな問題は、あなたが自分の冒険に心からイエスと言えるかどうかです。・・・英雄の冒険に。ほんとうの意味で生きる、という冒険に。(349ページ)

 

神話の力

自分が本当にしたいことに携わったとき、人は様々な困難に直面する。そして困難に直面することこそ、“今生きているという経験”なのである。シャーマンは身をもって体験しているからこそ神話の語り手たりえる。人は自分より大きな目標に向かって旅をするとき、生を生きる。神話は何をすればいいかは教えてくれない、神話は冒険者に困難に直面することを予告してくれている。

蛇足

困難なくして今生きている経験はできない

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