毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

”巨人の肩の上にのる”、ということ~『アインシュタインと相対性理論がよくわかる本』茂木健一郎氏(2016)

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アインシュタインと相対性理論がよくわかる本 (PHP文庫)

茂木氏は脳科学認知科学の研究者、20世紀最大の発見といわれる相対性理論は、どこが真に革命的だったのか? (単行は2009年、文庫は2016)

 

ガリレオ

ガリレオの発見で一番重要なのは、「ガリレオの相対性原理」だ。ガリレオは、運動の相対性という問題を最初に取り上げ、「お互いに等速運動をしている慣性系では、力学の法則は同じである」という「相対性原理」を発見したのである。(32ページ)

ガリレオ・ガリレイの発見した相対性原理は、あくまでも力学の範囲であった。それに対し、アインシュタインの構築した相対性理論は、力学の範囲を越えて、光を含む電磁気を意識し、物理の理論前半に拡張されていた。(34ページ)

ニュートン

ニュートンは、ガリレオが死んだ年に生れた。彼は、ガリレオが地球上で起きる力学の法則について相対性原理を発見したのに対し、天体の運動も共通の法則に従うことを見出して、物理学に大きな革命をもたらした。(36ページ)

エルンスト・マッハ

マッハはニュートン力学が前提にしている絶対空間、絶対時間の概念が我慢できなかった。・・・マッハは絶対空間や絶対時間を批判しただけでなく、光や電磁気の理論もニュートン力学で説明しようとする当時の科学者の態度にも厳しかった。ニュートン力学は他の分野の物理学に対して優先権を持つものではないと主張し、アインシュタインに強い影響を与えている。(55ページ)

アインシュタイン

マッハの問題提起に答えを与えて物理学革命を起こしたアインシュタインの態度も、同じだった。・・・当時の常識だった時間や空間の概念の基礎を問い直すことで、質量とエネルギーの等価性といった驚くべき結論を導き出したのがアインシュタイン相対性理論なのである。(57ページ)

アインシュタイン相対性理論がよくわかる本

ガリレオ相対性理論を発見した。ニュートンはそれを宇宙全体の力学に拡張した。マッハは絶対空間と絶対時間を批判した。アインシュタインは絶対空間と絶対時間を、相対空間と相対時間に拡張した。

私の理解では宇宙全体で絶対空間と絶対時間を前提にする限り慣性系だけの記述で事足りる。実質的に非慣性系、異なった絶対空間と絶対時間という概念は存在しなくなる。アインシュタインは空間と時間の非慣性系を考えた。違った空間と時間の座標軸があったらどうなるか、と考えた。その結果空間と時間は絶対的なものではなく伸び縮じむことで、力学における非慣性系のように違った視点が得られる。

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ニュートンは「私がかなたを見渡せたのだとしたら、それはひとえに巨人の肩の上に乗っていたからです。」と語った。アインシュタイン相対性理論と呼ぶのか、ガリレオは力学の相対性理論と言われるのか?先人の偉業を拡張することで次の偉業が達成される。エルンスト・マッハはニュートンアインシュタインをつないだ。

蛇足

エルンスト・マッハ(1838~1916)、オーストリアの物理学者、科学史家、哲学者。

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