毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

印税15億円の作家の"贅沢"とは何か?~『作家の収支』森博嗣氏(2015)

作家の収支 (幻冬舎新書)

 森氏は累計1400万部の”マイナー作家”、作家は、どれだけ儲かるか?(2015)

  

本書帯より

1996年38歳のとき僕は小説家になった。作家になる前は国立大学の工学部助教授で、月々の手取りは45万円だった。以来19年間に280冊の本を出したが、いまだミリオンセラの経験はなく一番売れたデビュー作『すべてがFになる』でさえ累計78万部だ。ベストセラ作家と呼ばれたこともあるが、これといった大ヒット作もないから本来ひじょうにマイナな作家である―総発行部数1400万部、総収入15億円。人気作家が印税、原稿料から原作料、その他雑収入まで客観的事実のみを作品ごと赤裸々に明示した、掟破りで驚愕かつ究極の、作家自身による経営学

自分の好きなものを知っている

自分が好きなものを知っている人は、その好きなものに金をつぎ込むだけで、一般的な贅沢をする必要がないからだ。好きなものがない人は、普段から他人のことを羨ましがっている。だから、大金を手にしたら、自分もそんな贅沢がしたい。つまり、人から羨ましがられたいという願望を持っている。

しかし、自分の好きなものがはっきりわかっている状況こそが、その人を成功へと導くという例が多い。この道理でいくと、人を羨む人は成功しない。

森氏の趣味

今の僕は、広い庭で毎日草刈りをしたり、種を蒔いたり、雑草取りをしたり、水やりをしたりしている。これで午前中は終わる。午後は、庭園鉄道の工事をする。寒い季節にはガレージで機関車を作っている。ときどき、機関車に乗って、自分の庭を巡る。森林の中を抜けていくとき、「気持ちが良いなあ」と感じる。ただそれだけのことである。誰かに自慢をするためにやっていることではないし、また、自分以外の人に価値があるとも思わない。現に、家族も誰も見向きもしない。(171ページ)

人を羨ましがらない

本書は「作家は、どれだけ儲かるか?」を書いた本である。作家として19年で15億円の印税を稼いだ訳であるが、森氏は「贅沢をしていない」という。庭園鉄道を作りそこに時間を使う。それを贅沢と見るかは正にその人の価値観によるのであろう。

自分の好きなものを知っていますか?他人に自慢する為ではなく、自分にとって気持ちがいいな、と感じることをやる。これが人生である。