毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

地球上の言語は全て同じ文法で作られている!?~『言語を生みだす本能 上・下』スティーブン・ピンカー氏(1995)

言語を生みだす本能〈上〉 (NHKブックス)

ピンカー氏は心理言語学者、言語本能説の前提として、人は普遍的な心的言語で思考することをまず洞察する。さらに、文法のスーパールールが生得であること、その基本原理を幼児は母語に応用して言葉を獲得することを、最新の発達心理学等から確認する。(1995)

 

言語は本能的な存在である

言語は人間の脳のなかに確固とした位置を占めている。言語を使うという特殊で複雑な技能は、正式に教えられなくても子どものなかで自然発生的に発達する。私たちは言語の根底にある論理を意識することなく言語を操る。・・・私は、時代がかった言葉ではなるが(言語を)「本能」と呼びたい。(上20ページ)

チョムスキー以来

今世紀を通じてもっとも有名な言語本能類似説を提示したのはノーム・チョムスキーとおいう言語学者である。チョムスキーをしてはじめて、言語にまつわる幻想を取り払って、言語という体系の複雑さを世に知らしめた。(上24ページ)

普遍的文法の存在

言葉を一つ、任意に拾い出して観察したとき、まず驚愕すべきは、常識的に考えて主語、目的語、動詞に相当する、といえるものが存在することだ。・・・英語の主語の概念を下敷きにするある範疇を「主語」と呼ぶとして、ある言語を調査する言語学者が、「主語」に相当する句を発見した場合、人称と数が一動詞と一致するとか、目的語に先行するとかの特徴も見つかることが多い。主語、目的語、名刺、動詞、助動詞、語形変化などを云々するのが科学的に意味を持つのは、文法的特徴相互にこうした「相互関係」があるからこそなのである。火星人から見たら、人間はすべて単一の言語を話している、とチョムスキーが主張したのは、世界のあらゆる言語の底に、同一の記号操作機構が存在することを発見したからだった。(下17ページ)

日本語と英語

英語は「SVO言語」で、「Dog bites man(犬が人をかむ)」のように、主語、動詞、目的語の順に単語がならぶ。日本語は主語、目的語、動詞の順に並ぶ「SOV言語」、現代アイルランド語は動詞、主語、目的語の順に並ぶ「VSO言語」である。(下11ページ)

英語では、句のヘッドが役割の担い手より先行するが、逆の順序になる言語は数多い。・・・たとえば日本語では、動詞が目的語のうしろに位置する。「Kenji ate Sushi」ではなく、ケンジが/すしを/たべた」となる。(英語でいうところの)前置詞も名詞句のうしろにきて、「To Kenji」ではなく「ケンジに」となる(だから前置詞ではなく後置詞という)。(上151ページ)

言語とゾウの鼻

これほど優れた(鼻という)器官を持つ生き物で、現存するのはゾウだけである。・・・ゾウの鼻がその他の生き物の鼻孔と違っているのと同様に、言語もヒト以外の動物の意思伝達システムと明らかに違っている。・・・人間の言語は「普遍文法」という体系を基本にしているから、無限であり、デジタルであり、合成的である。(下154ページ)

言語とは本能

我々は生まれながらに言語を判断する本能を持っている。1歳を超えるころ、数少ない語彙から生得的な文法を活用して一気に言語を習得する。「火星人から見たら地球人は同一の言語をしゃべる」という比喩には驚かされた。地球上の言語は主語、動詞、目的語を持つ。当たり前だが主語、動詞、目的語で構成されるという文法に従っており、それは我々の脳の認知機能と極めて適合しているのである。

中学生以来私は英語を勉強してきた。英語はSVOであり、日本語はSOVであることを知っていた。本書により、全ての言語は生得的にSVOを持つ、とより高次の認識に拡張することができた。ヒトは、本能的に同一の文法体系を持つ、ことを実感する。

 蛇足

 全ての言語はSVOを持つ、と認識したとき、私の英語活用能力は向上するのであろうか?

 

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