毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

ファンタジーにはリアリティーが必要だった~『ゲームシナリオのためのファンタジー事典 知っておきたい歴史・文化・お約束110 』山北 篤氏(2010)

ゲームシナリオのためのファンタジー事典 知っておきたい歴史・文化・お約束110 (NEXT CREATOR)

 山北氏はゲームライター、ファンタジーのストーリーを創作するときに知っていてほしい歴史・文化・お約束を事典形式でまとめたネタ帳。 特にゲームと相性がよいと考えられるネタを中心に構成。シナリオのリアリティを増すためのヒントが満載。(2010)

 

ファンタジーにはリアリティが必要

 

ファンタジーというと、神やモンスターがいて、剣と魔法がものをいう世界を思い浮かべることでしょう。もちろん、そんな世界は現実にはありませんが、空想の世界に入りこんで、真剣に戦ったり、考えたりするのは、本当に楽しいものです。

こうしたファンタジー世界に埋没させるためには、リアリティが必要です。リアル(現実)ではありません、リアリティ(現実性)です。こんな世界が本当にあるのかもと思ってしまう、それがリアリティです。

例えば、ファンタジー世界では魔法が使えます。それは現実にはありえないでしょう。でも、魔法が使える理由を明らかにし、社会に魔法が溶け込んで自然に存在しているように設定することで、虚構と感じられないようにすることは可能なのです。

リアリティは、ディテールの積み重ねで増すことができます。そのために、現実の歴史や文化を利用するのです。(はじめにⅢ)

 

一神教

欧米で創作されたファンタジーの神は、どちらかというと一神教もしくはそれに類する神が多いのです。『指輪物語』のように神が何人もいる世界でも、至高神の下に下級神たちがいるという構造は、キリスト教で言う唯一神と天使たちの構造と一緒です。・・・けれど、多くの神がいる世界で、自分だけが神だと宣言する神は、ほかの神を認めず悪魔か何かだと説きます。もちろん、他の神の信者は悪人か、妄想だとするしかありませんね。この場合、その神と信者は排他的になりがちです。(111ページ)

ゲームシナリオのためのファンタジー事典

ファンタジーのゲームシナリオを書く人の為のネタ帳である。歴史、文化、お約束が110のトピックスとして整理されている。ファンタジーゲームはヨーロッパを舞台に設定されることが多いという。ゲームに見えて、史実を活用して詳細にまで踏み込んだ設定が行われていることを知る。

本書のトピックスの一つに一神教に関しての解説がある。「一神教では他の神が悪魔と呼ばれる」という一行に驚かされる。ゲームの設定では排他性の持つ一神教は①他の一神教から離れて暮らす、②他の一神教を排除する、という行動パターンを取る。①の場合は偏屈な神でストーリーになり難い、②の場合は自分だけが正しいという無理な主張をするので無理な行動が必要となる、と解説する。

ファンタジーのシナリオの為の設定は、現実のキリスト教文化の構造を浮き彫りにしてくれる。

本書は教養は「事典」で磨け ネットではできない「知の技法」 (光文社新書) をきっかけに手にとりました。

蛇足

 

今度、ロールプレーイングゲーム(RPG)をやってみよう、

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