毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

戦争において補給は重要である、では補給戦は目的なのか?~『補給戦』 クレフェルト 氏(1977)

補給戦―何が勝敗を決定するのか (中公文庫BIBLIO)

 クレフェルト氏はイスラエル歴史学の研究家、補給こそが戦いの勝敗を決するということを分析した。2006年刊

 

兵站術とは

 

本書では「軍隊を動かし、かつ軍隊に補給する実際的方法」でり、「兵として生きる為に必要な3000キロカロリーを補給する事」(10ページ)と定義。

 

補給すべき物は何か?

 

 

弾薬や他の戦隊がその補給物資をもはや現地徴発しうることができなくなったからである。1870年の普仏戦争の時になっても、弾丸は全補給必需品のうち取るに足らぬ比率を占めているに過ぎなかったが、第一次世界大戦の最初の数カ月で弾丸対他の補給品の比率は逆転、第二次世界大戦では食糧は全補給物資の8ないし12%を占めるに過ぎなかった。387ページ

 

第一次世界大戦塹壕戦になった要因は?

 

 

機械製品―砲弾、小銃弾、燃料、高度な工兵資材-が軍隊の主要消費物質としては農産物を上回った結果、こんどは戦争が無限に多い紐帯のからみに縛られて進撃不可能となり、想像を絶するほど大規模な相互殺戮戦に変わった。388ページ

 

戦争の摩擦の拡大

 

 

第二次世界大戦30年に渡る輸送手段の発達にもかかわらず、筆者の見解によれば機動作戦のスピードは、近い将来劇的に上昇するとは思えない。・・・一連の新輸送手段のスピードと走行距離は、非常な摩擦の増加、特に補給物資の量の増加によって、完全とは言えないまでも大部分相殺されたことは事実である。389ページ

 

兵站が戦争をどの様に変えたか?

 

第一次世界大戦では鉄道が兵站に利用された。工場から弾薬を大量輸送する事が可能なり、弾丸が前線で大量消費する事が可能となった。一方鉄道の集積地から前線までの間が完全に機械化されていなかったので敵味方が均衡した所で塹壕戦を延々と繰り広げる事に陥った。

第二次世界大戦以降は完全に機械化された軍隊が地理的な制約を受けなくなった。しかし実際には戦争を継続しようとするとその機械化故に招く「摩擦」が拡大、投入物資は膨大となりますます効率が低下する事になる。

補給戦が目的か?

 

戦争が兵器の機械化と輸送力の向上によって大きく変貌していた。一方で機械化と輸送力向上は更に大きなロジスティックを必要する。ハイテク兵器はハイテクであるが故にますます消耗品が必要となる。もはやハイテク兵器を使用する現代の戦争は巨大な補給網がなければ継続できない事に気づく。戦争が長期化すると補給し続ける事が目的化してしまう。目的と手段の取り違え、これほど無駄な事はない。

蛇足

 

やっている事は目的と手段が逆転していないか?

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