毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

シンデレラ・ストーリーの発祥はどこまで遡れるのか?~『自分のなかに歴史をよむ』 阿部 謹也氏

自分のなかに歴史をよむ (ちくま文庫)

阿部謹也(1935-2006)中世ドイツ史の研究家、かつてヨーロッパでは、どのような生活が営まれていたか。単行は1998年、文庫は2007年刊。

シンデレラ・ストーリー

 

 

シンデレラはいつも灰だらけで、美しく着飾った姉たちをうらやましく思って泣いていました。しかし、彼女にあるときチャンスが訪れ、王子様と結婚することが出来ました。・・・シンデレラは王子と結構できるようん、なんらからの努力をした訳ではまったくないのです。ただあるとき、妖精が現れ、彼女に美しい服とガラスの靴と馬車などをプレゼントしてくれたのです。この妖精が大宇宙の存在であることはいうまでもありません。(177ページ)

 

大宇宙と小宇宙

 

 

現代人がひとつの宇宙の中で暮らしているとするならば、古代、中世の人々は二つの宇宙のなかで暮らしていたといってもよいでしょう。・・・彼らは人体を小宇宙と考えていました。そして小宇宙は大宇宙のなかにあって、たがいに対応しているものと見なされていたのです。・・・中世の人々が、かろうじて把握しえたのは小宇宙だけでした。・・・大宇宙は善悪すべてを包含する世界だったのです。(122ページ)

 

ヨーロッパは一つの宇宙へ向かう

 

阿部氏はキリスト教が一つの宇宙観へとヨーロッパを変えていったと説明する。キリスト教地中海文明の威光、虐げられた人々への無条件の愛、そして軍事力だったと説明する。

その結果ヨーロッパは大宇宙という神秘性、土着性を排除する事になる。

 

ヨーロッパを文明が特殊な地域文化の域を越えて世界に広がってゆくためには、この様な手続きが必要でした。なぜなら、具体的なモノから離れたからこそ、西欧文明は異質な国々にも輸出され、受容されるようになったからです。(156ページ)

 

シンデレラはキリスト文化とは違った世界

 

城壁を一歩出れば狼が雄叫びを上げ、森は様々な者の済む世界。それは善悪すべてを包含する大宇宙であり、シンデレラという小宇宙はそこに佇む存在として描かれている。シンデレラ・ストーリーはキリスト文化の前のゲルマン文化を色濃く反映ししている。別の言い方をするとヨーロッパ文明がキリスト教文化に統一されたのは宗教改革以降から現代の前までの例外的な期間だったと見る方が正確であろう。

実はシンデレラはギリシャまで遡る

 

Wikiで調べたら最も古いシンデレラ・ストーリーは、ギリシャで紀元前1世紀まで遡る事ができるという。持たざる者が大宇宙の力に導かれるシンデレラ・ストーリーは普遍的な神話の構造を有している。

蛇足

 

シンデレラは舞踏会に行きたいと考えた、そこが始まり。

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