毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

特許はどうして中世ヨーロッパで生まれたか~書評「棲み分け」の世界史より

「棲み分け」の世界史―欧米はなぜ覇権を握ったのか (NHKブックス No.1222)

著者はヨーロッパが覇権を握ったのは「棲み分け」のフレームワークを用いる。ヨーロッパは富と権力、人口が分散し、ヨーロッパを「棲み分け」ていた。更に時間と空間の世界的な「棲み分け」が行われた。ここにサイエンスと資本主義が生まれたと主張する。2014年10月刊

f:id:kocho-3:20141028084010p:plain

サイエンスの源流には中世ヨーロッパの「外科職人」も役割を持っていた。

 

本書の特許についての文章がおもしろい。

特許とサイエンス

眼鏡は13世紀に登場していた。眼鏡屋の「金儲け心」が顕微鏡とともに望遠鏡も生んだ。最小に誰が望遠鏡を発明したかは不明であるが、1608円、オランダの眼鏡職人ハンス。リッペルスハイ(1570-1619)が望遠鏡の特許を申請した。この時代に特許があったということは、「良い仕事はお金になる」ということの証拠である。

特許制度は富が棲み分けしていたから成立したともいえる。良い製品を創っても富が入らなければ、特許で自分の技術を防衛する必要もない。皇帝に献上するだけなら、望遠鏡の改良は起こらない。天体を観測して本を出版して富みと名誉をもとめる者のために、眼鏡屋は望遠鏡の改良競争を行う、あるいはAという王様が望遠鏡に興味を示さなければBという王様が買ってくれるかもしれない。(83ページ)

特許制度はいつ生まれたか?

特許を意味する"patent"の語源は、ラテン語の"patentes"(公開する)に由来する。イタリアのヴェネツィア共和国では、現在知られる限り最初の特許は、1421年に、建築家ブルネレスキに大聖堂建設に必要な大理石運搬船の発明に対して与えられ、ブルネレスキは3年間資材運搬船から生じる利益を保証された。その後1474年には世界最古の成文特許法である発明者条例が公布され、近代的な特許制度が成立した。(wiki

特許制度の利点

現代において特許制度の利点は「公開代償説」で説明される事が多い。これは「発明者に独占権を認めないとすると模倣されるため、発明者は発明を秘密にし、その結果、発明が社会的に活用されない。新規で有用な発明を世の中に提供した代償として、一定期間、その発明を排他的に独占する権利を付与する」と説明される。

特許とはテクノロジーをビジネスに使う為

特許の起源から特許は「テクノロジーをビジネスに活用する」手段だった事が明確になる。著者は「ヨーロッパ史では権力、人口、都市(市場)そして富が一極に集中することなく適度に分散あるいは競合して棲み分けようとするベクトル」があったと説明する。このフレームワークで考えれば、発明者と出資者、そして利用者もまた特許により棲み分けていた。これはヨーロッパの富と知識の「棲み分け」がサイエンスと資本主義の誕生につながる道筋が見えてくる。

蛇足

時間と空間の棲み分けは1880年グリニッジ時間設定に象徴される

こちらもどうぞ

 

天文学で考える2100年の「望遠鏡」、それは既に現実~私達が未来を手に入れる為にすべき事 - 毎日1冊、こちょ!の書評ブログ