毎日1冊、こちょ!の書評ブログ

2013年8月から毎日、「そうだったのか」という思いを綴ってきました。

我々は物の見方を180度変えられる~フロンギスト説と酸素

だれが原子をみたか (岩波現代文庫)

原子を見ることすらできない時代になぜその存在を理解できるようになったかを科学史的に記述した本。

 

f:id:kocho-3:20140902084726p:plain

フロンギスト説

物が燃えるというのは、その物の中にかくれていた”フロギストン”が外にでることだ、とシュタールという人は考えた。フロギストンは、アリストテレスの四元素のうちの火のことだと思っていた。フロギストン説は燃焼にかかわる化学現象を体系的に把握させる力を持っていた。・・・金属を灼熱すると、ときには燃え上がりさえして、あとに灰状の物質がのこる。このいわゆる金属灰は、フロギストンが逃げたぬけがらである。

フロギストンは負の重さを持つ?

金属を熱して灰にすると、フロギストンがでていってしまったはずなのに、かえって重くなることだ。ことによるとフロギストンは負の重さを持っているのかもしれないーそう考える人たちもでた。その証拠に、火は下に落ちてこないで、上に上がっていくのではないかというのだ。

 

ブリーストリの実験~脱フロギストン空気

水銀の灰は赤い粉末である。それを真空中で熱すると、気体が発生する。もし、そばにフロギストンを出す物質があれば焔があがるところだ。・・・ブリーストリ(1783-1804)はトリチェリの真空の水銀野仲に水銀の灰をおき、直径30㎝という大きな凸レンズで太陽の光を集中した。(1774年)このとき水銀の灰からでてくる気体を集めて、そのなかに燃えさしの木片を入れてみたら、木片はパッと燃え上がった。・・・これに彼は”脱フロギストン空気”の名をつけた。フロギストンのない気体という意味だ、この気体が物をよく燃やすのは、フロギストンを持っていないために、他の物質からよくフロギストンを引き出すからだと考えて、こういう名にしたわけである。

 

酸素の発見~脱フロギストン空気は酸素

燃焼とは酸化ということ、酸素と他の元素が結びつく事であると知っている。

フロギストンと酸素の説明を並べてみる。

燃焼するという事は物質の中の負の重さをもつフロギストンが外に出る事

燃焼するという事は物質の外の正の重さをもつ酸素が中に入る事

酸素の性質を逆さまにするとフロギストンの説明と一致する事がわかる。アリストテレス

四元素の相互転化という考え方を主張した。火、空気、水、土の4つを単純物体と呼び、ほかの物体はこれらで構成されていると考えた。フロギストンが否定され、アリストテレスの四元素のうちの一つが酸素という原子に置き換えられた。我々はフロギストン説を笑う事はできない。なぜなら説明原理でいえば「負の酸素」といえばフロギストンもまた説明原理としては筋が通る。当時の科学者はここから空気と酸素と窒素の化合物である事を類推した。ここに及んではじめてフロギストンの説明が破綻する。我々は事実の積み重ねによって、物事の味方を逆さまに変える事に成功した。我々は原子を見ずに原子を観た。

蛇足

量子物理学から見ると負の重さのフロギストンには何の違和感もない。